H30.6.1 職員研修 「総務官僚・脇雅昭さん」

三宅町で職員さんに対する研修がありました。
森田町長のつながりで、声掛けして実現したようです。

職員さん対象ですが、議員にも声がかかり行ってきました。
奈良県全域から職員さんが来ていました。(生駒、桜井、奈良県、川西町の職員さんが来られていました。質問の時に自己紹介していました)

感想:
私の知っている公務員とはまったく違うイメージの人でした。
ですので、不思議な感じで話を聴いていました。
三宅町議会の議員の参加者で、私より年代が上の人(60代以上)は、面白いように講師の脇さんの熱にうなされたような印象を持っていました。
(参加議員:植村議長、川口議員、松本議員、森内でした)
「私が役場の職員だったら、すごく感動しただろうな~」と感じましたが、残念ながら私は特別公務員で、次の年には同じ役割で行政に関わっていない可能性は充分あります。

ですので、その場では、尋ねてみたいことがパッと出てきませんでしたが、あとで振り返った時に、色々と尋ねたいことが出てくるだろうな~と感じていました。

脇さんの考えるような職員さんばかりであれば、首長はやりやすいだろう。だからこそ、講演依頼を出したのだろうなと感じました。
(単に面白い人と交流を持って面白い話をして欲しいと思っておられただけかもしれません)
こういうタイプの職員さんが増えれば、町も変わるし、議員はますます不要になるでしょう。

今回の脇さんの言っておられたこと(森内のまとめ)
「積極的に取り組まなければ、仕事は楽しくない」
「いろんな視点を持って。そのためには違う世界の人と交流をすべし」
「公務員は、安定しているからこそ、チャレンジできる」
大きくまとめると、こんなところでしょうか。

細かい話で、その発想イイ!! というものがたくさんありました。
「公務員は、平等が大事だと言われる。おカネを平等の基準にすると、『やらない平等』になるが、公しての信頼を基準にする『やる平等(他からの依頼が来たら同じようにやります)』として、事業を実施することが出来る」

 

ネットで集められる脇さんの発言など引用しておきます。

【神奈川県庁 脇雅昭氏:第1話】官僚と地方公務員の壁を壊す総務省官僚

【神奈川県庁 脇雅昭氏:第1話】官僚と地方公務員の壁を壊す総務省官僚

脇雅昭 TOP1
【脇雅昭氏の経歴】
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。入省後に熊本県庁に出向、2010年に本庁に戻り、人事採用、公営企業会計制度の改正を行う。2013年から神奈川県庁に出向し、現在は自治振興部、市町村課長として従事。広く深い人脈を生かして、『よんなな会』を主宰し、官僚と47都道府県の地方自治体職員を繋いでいる。入省後に受験した司法試験に合格。

―日本は課題先進国としての道を突き進み、少子高齢化、国民の多様化に対応していく必要がある。そのため、国と自治体の連携を図り、国から地方への権限移譲を前提とした新たな役割分担を考えていくことが必要だ。しかし、率直にいって、国と地方自治体の関係性は必ずしも良好なわけではない。

今回は総務省から神奈川県庁に出向している、脇雅昭氏にインタビューをさせていただいた。脇氏は『よんなな会』という、いままでにない規模で国家公務員と地方公務員の交流する場を設け、国と地方の壁を壊している。

しかし、脇氏は壁を壊すだけではなく、「公務員とは何か、どうあるべきか」という命題も掲げ、自らも公務員のあるべき姿を模索し、実践し続けている。そんな脇氏に『よんなな会』を主宰する経緯やそのお考え、そして、今後の活動についてお聞きした。

地方公務員と国家公務員が一度に550人集まる会

加藤:今日はよろしくお願いします。脇さんは個人の活動として『よんなな会』という会を主宰しています。こちらはどういうものなのでしょうか。

脇氏:47都道府県の地方公務員と中央省庁で働く官僚を繋げることを目的としています。会の中では、官民問わず志を持って活躍している方に講演をしてもらい、そういう良い空気感を感じたうえで、いろいろな人が出会って新しいネットワークができればと思っています。

加藤:前回の第9回は渋谷ヒカリエで開催し、550人が集まりました。地方公務員と官僚がこの規模で集まる会というのは、聞いたことがないです。これまで累計で、何人ぐらいが参加しているのでしょうか?

脇氏:3400人以上の方に参加していただいています。

加藤:すごい数ですね。

よんなな会

第9回『よんなな会』 約550人が参加

熊本県庁時代の恩返し

加藤:どういうきっかけで『よんなな会』を始めたのでしょうか。

脇氏:2008年に、総務省から熊本県庁に出向したんですけど、熊本県庁ではいろんな人たちにお世話になったんです。特に大きかったのが、熊本のいろいろな人たちを紹介してもらって、大きなネットワークを作れたんですね。

その後、総務省に戻ると、自治体から出向派遣で来ている方が、土日も休まずに仕事をしていて、「なにか僕に恩返しができたらな」って思ったんですよ。地元からわざわざ来てもらっていて、知り合いもいない中、家族を連れて来たりしているわけじゃないですか。そういう人たちに喜んでもらえる場創りができればと思ったんです。

5年前に60人規模で初開催

加藤:初めは、何人くらいの規模でスタートしたのでしょうか?

脇氏:5年ぐらい前に初めて開催して、その時は60人位の規模でやりました。

加藤:最初から60人もいたんですね。

脇氏:自分の周りにいた人たちで始めて、第一回目は渋谷の殺風景な会議室でやりました。

加藤:参加者はどういう方だったのでしょうか。

脇氏:僕の周りにいる地方自治体から国への出向者、国家公務員の同期や後輩とかです。

「やーめた!」って思った

加藤:550人の規模にするまで、大変なことも多かったと思いますが、ターニングポイントみたいなものはありましたか?

脇氏:やる度に「すげー良かった」って言ってもらえるようになっていったんですね。僕自身もすごく良いことをやっているつもりだったんです。

ただ、何回目だったか忘れちゃったんですけど、あるとき、「次回いついつにやりましょう」って周りに言った後に、僕のテンションがすごく下がって「やーめた!」って思ったんです(笑)。

加藤:なるほど(笑)。

脇氏:それで、「申し訳ないけど今回やめます」って言って、やめたんです。

本当に価値を生み出しているのかな?

加藤:なぜ、テンションが下がったんですか?

脇氏:当時、仕事が忙しかったのもあって、「ちょっと、もたないな」って思ってやめたんですね。この時に思ったのが、自分ではすごく良いことをやっているつもりだったんだけど、僕が「やる」って言えばやる、「やめる」と言えば終わる。

「そんなものって、本当に価値を生み出しているのかな?」って思ったんです。本当に世の中で価値があるものって、僕の意思とは関係なく、「僕がいなくなっても回り続けるようなものじゃないかな?」って思ったんですね。

だから、当時のよんなな会は「自分の周りの人だけが楽しくなるようなものでしかないな」と思い、「これじゃダメだ」と感じました。それから、各都道府県に幹事役をやってもらう人をお願いすることで、いかに自分が知らない人に来てもらうかというところも考えるようになりました。

脇雅昭 1-2

システム化した瞬間 それが義務になる

脇氏:ただ、厳格な組織にしていくと、だんだん想いが薄れてきちゃうから、そうはしていないんです。システム化した瞬間、それが義務になってしまうから。

加藤:そうですね。

脇氏:だから、一定の仕掛けの中で、どう熱量を伝導させていくかというのを大事にしています。人の集め方も、デジタルな部分を使いながら、超アナログにもやっているんです。

加藤:例えば、どういうことですか?

脇氏:もともと、都道府県の幹事の人にExcelを投げて「周りの人をこれで集めて下さい」って言って、最終的に僕が手集計していたわけ。でも、ある回、六本木のミッドタウンで開催したら400人くらいの人が来た。

だから、「これからもっと人が来て大変だな」と思って、効率的にやろうと、『Google フォーム』でウェブの問合せフォームを作って、そこから申し込むようにしてもらったんです。そうしたら、全然人が集まらないわけですよ(笑)。

加藤:どのくらいの数になったんですか?

脇氏:前回の半分の200人くらいしか集まらない(笑)。しかも、キャンセルがめちゃくちゃ多い(笑)。

加藤:なるほど。

脇氏:結局、参加者からすると人じゃなくて、ウェブの問合せフォームと向き合っちゃっているから、キャンセルすることへの罪悪感もない。且つ、誘うほうもメールを転送しているだけになってしまう。

それだと、あんまり熱や想いが伝わらない。だから、幹事の人には申し訳ないんだけど、いまはまたExcelでやってもらっています(笑)。

幹事に面白いと思ってもらう

脇氏:また、熱量を伝えていくためには、幹事自身が、自分の言葉で「よんなな会」という場の魅力を語ってもらえるようにならないといけないと考え、もっと少人数の幹事会もこまめに開催しています。

そもそも幹事の人が『よんなな会』って言って誘っても誰も知らないし、『脇雅昭がやる会』って言っても尚更よくわからない(笑)、人に刺さらないじゃないですか。

だからまずは、幹事が自分の言葉で「全国の公務員が集まる、ムチャクチャ面白い会があるから来てよ!」って言ってくれる位にならないとダメだなと思って、そこから幹事会のようなものを、1~2か月に1回くらいやって、その人たちが「おもろいね、これ!」ってなってもらえるようにしています。

小泉進次郎 脇雅昭

第9回の『よんなな会』では小泉進次郎氏と対談

脇氏:熱量をどうやって伝導させていくか、それによってどう人に動いてもらうか、「よんなな会」だけでなく、色んな施策に通じる重要な視点からも、大事な仕掛けだと考えています。

【神奈川県庁 脇雅昭氏:第2話】抽象的な日本はどこにもない

脇雅昭 TOP3

主催者が聞く側の環境を整えないといけない

加藤:公務員交流会である『よんなな会』を運営して行きながら、修正しているポイントはありますか。

脇氏:沢山ありますね。過去に、東大でやった回があって、『公益資本主義』の原丈人さん、『東北食べる通信』の高橋さん、エベレストを無酸素で登った登山家の栗城さんという、錚々たる方々に話をしてもらったんですね。

そこで、すごく良い話をしてもらったんですけど、聞いている側が、すっと受け入れられてない感じがした。なんかちょっと、こっぱずかしいというか。

加藤:なるほど。

脇氏:それって「なんでかな?」って思ったら、その回で利用したホールが普通の殺風景なスペースで、ただ、ステージと席があるだけというか。その環境の中、主催側が話を受け取りやすくする雰囲気も醸成できてなかった。

集め方も「みんな志を持って頑張っていきましょう!」みたいなものじゃなくて、「とりあえず、東大で飲みましょう。イエーイ!」みたいな感じでやっている(笑)。そうすると、いきなり志の話をぶっこまれたときに、受け入れる側のギャップがあるんですよね。

加藤:確かに、そうかもしれないですね。

脇氏:だから、場を作る人間が本気で空間創りを考えなくちゃいけないんだなと思って、いまはオープニングムービーを作ったり、会場を少し薄暗くしていたり、後ろで音楽をかけていたりとか、学びながら試している感じです。

よんなな会 会場空気

会場では 音楽や照明が雰囲気を盛り上げている

目の前のことに追われている人たちに来てほしい

加藤:前回を見る限り、志の高い人を集めたいっていう感じの雰囲気ありませんか?

脇氏:本当? じゃあ、もうちょっと修正しないと(笑)。志の高い人に来てほしい会じゃないんですよね。もちろん、結果的には志の高い人になってもらっていると思うんですけどね(笑)。

加藤:最も来てほしい人は、どういう人ですか?

脇氏:仕事が忙しい中で、目の前のことに追われちゃっている人たちに来てほしい。「もともと公務員になった理由ってなんだっけ?」とかが、1年に1回くらい堂々と言える場があってもいいんじゃないかなと。

そういう人に集まって来てほしいから、ヒカリエとか、ミッドタウンとか、マイクロソフトのオフィスとか、そういう場所で開催する。そうすると、日々、忙しくても「行こっかなー」と思うんじゃないかと。

で、来てくれた人に『想い』の話をして、それが伝わったら最高だと思っています。

困ったことは 外務省の人が来ないこと

加藤:運営していく中で、困ったことはありましたか?

脇氏:うーん。困ったことか・・・。困りまくっているけど(笑)。困ったことねぇ・・・、外務省の人が来ないなぁ、とかですかね(笑)。

加藤:その内容は書いても大丈夫ですか?(笑)

脇氏:大丈夫じゃない?(笑)だって、何か言ってくる人が出て来たらさ、「とりあえず、じゃあ参加して下さい」って誘えばいいじゃん(笑)。

加藤:なるほど(笑)。

抽象的な日本はどこにもない

脇氏:むしろ、何か言ってきてくれる人がいるんだったら会いたい。「僕らはこういう日本に住んでいます」って伝えたい。総務省の一番良いと感じたところは、「抽象的な日本はどこにもない」と捉えていることだと思うんですよね。僕がいま、神奈川にいる。同期も先輩も後輩も全国に散らばっている。

そういう人たちが集まって、状況が全然違うデコボコの日本を捉えながら、「抽象的な日本はないんだよ」ということを理解して、その上で、「じゃあ、どうやって制度設計していくべきか」というアプローチにこそ価値があるんですよね。

多分、日本の平均値に合わせて制度を作っても、誰もHAPPYにならないような気がします。

【神奈川県庁 脇雅昭氏:第3話】巨大な元気玉を作る挑戦

全国のデコボコを共有し 全市町村の人や想いが繋がる場にしたい

加藤:この先、『よんなな会』をどのように運営していきたいですか?

脇氏:神奈川県に来ても思うんですけど、みんな神奈川っていうと横浜のイメージしか持っていない。でも、県の西のほうに行くと、宮崎出身の僕が何か懐かしい田舎の感じがするわけですよ。やっぱり、デコボコの日本がそこにあるんです。

ひとつは、そういう全国のデコボコを共有しつつ、全市町村にいる人や想いが繋がる場として機能して、連絡を取ろうと思えば、いくらでも取り合えるようなものになればと思うんですね。

『よんなな会』のFacebook pageがあるんですけど、例えば、そこにいる人たちが「じゃあ、今度この町に行きます。この町に住んでいる人、会いましょうよ!」みたいな、そういう感じになればと思っています。

自治体の中で悩んでいる人がいれば その役に立ちたい

脇氏:もうひとつは、国に来ている人が地方に戻って、元の組織の中で頑張り続けようとした時、それが良い組織だったらいいけど、そうじゃなかったらムチャクチャ大変だと思うんです。

もともと『よんなな会』は、国に来ている地方公務員の人とか、国家公務員だけ対象にしていたんだけど、最近、関東の自治体の人も来てくれていたりするわけです。

そういう人の中で使命感がある人ほど、悩んでいる人も多いんですよね。「自分はこうやりたいと思っているけど、上司はこうで、こんな環境の中だからなかなかできないんです。でも、もっと頑張ってみようと思いました」って言ってくれる人もいる。

まだ、具体的な方法は浮かんでいませんが、そういう自治体の中で、悩んでいる人たちがいるのであれば、役に立ちたいと思うんですよね。この記事を読んでくれている人にアイディアもらいたいですね。

巨大な元気玉を作る挑戦

加藤:『よんなな会』を運営するにあたって、社団法人を作るような話がありますよね。

脇氏:社団は作りたいと思っています。

加藤:お金を集めたり、管理をきっちりすることが目的ですか?

脇氏:お金を集める気はなくて、「規模も大きくなってきたから組織体を作ったほうが良いのかな?」って思っているだけですね。

むしろ、いまお金がないからこそできている部分もあるんですね。もし、『よんなな会』を資本主義社会の中に乗せたら、参加者一人から「いくら取ればいいんだよ」って世界なんです。

例えば、今回のオープニングムービー。安室奈美恵のPVを作っていたり、東京駅のプロジェクションマッピング作ったようなすごい人が、「この会、良いじゃん!」って言って賛同してくれて作ってもらっているんです。それ、お金にしたらウン百万ですよ。ウン百万を参加者で割ってごらんよ・・・って話になってしまいます。

だから、実はこれってお金を使わずにいかに、人の想いを集めるかという、まさに『元気玉』だと思うんです。ひとりひとりの元気を集めて、巨大な元気玉を作れるかっていう挑戦でもあると思っています。

参加者と一緒に作ることに価値がある

脇氏:みんなが少しずつ力を出して作っていくって、超価値があると思うんです。

『よんなな会』の交流会では、「一人一品ずつ、みんなに食べさせたい地元のものを持ってきて」とお願いしているんですね。

本当はケータリングにして、一人から2000円とか3000円もらうほうが簡単なんですけど、それをやると、参加者が完全なお客さんになっちゃうと思っています。

よんなな会 地元の物2

東北エリアの名産品などが並ぶテーブル

そうじゃなくて、みんなが参加者になるために、全国のイケてるもの集めてもらう。それって、僕ひとりではできないけど、みんながちょっとずつやればできるんです。

「みんな一人一品ってなんや?」って苦情も来るんですけど(笑)、僕としてはそれが結構、嬉しくて。来るまでの間に考えてくれて、一緒に場を作ってくれているんだって思うんです。

加藤:本当にそうですね。

脇氏:しかも、仮に自分が持って来たものが余っていると、みんな一生懸命宣伝してくれる。「これ、見た目悪いけど、マジでうまいんだって!」とか言っているんです!!

それって、僕からするとありがたいなと思って。それだけ想いを持ってここに参加してくれている。地元のものを、いろんな人たちに伝えようとしてくれているんです。

よんなな会 地元の物3

<写真左下>張り紙を貼って地元のお店をアピール

お金は受け取りたくない

脇氏:いまは個人の活動の集合体として回せているけど、これがもし『よんなな会株式会社』とかだとしたら、「とりあえず、お金を集めないといけない」とかになると思うんですね。

加藤:ありえますよね。かといって下手にお金をもらっても、スポンサーの意向が出て来るリスクもあります。

脇氏:あぁー、もうイヤ(笑)。お金とかは、受け取りたくない(笑)。脇雅昭3-3

公務員ってなんなんだろう?

加藤:お金をもらわないで運営することの強みっていうのも、実はあると思うんですよね。

脇氏:本当にそう思います。ただそれは、僕が一定のお給料を公務員として安定的に所属組織から頂いているからチャレンジできるんだよなと。社会貢献的な動きをしていて起業する人っていて、「どう金稼いでいくんだろう」みたいなことをする人は本当にすごいなと。そういう人の存在が大事だと思うんですよね。組織に所属する僕がいくら言っても説得力はないんだけど(笑)。

加藤:個人的に思うのは、月に30~40万円ぐらいあれば、人ひとりぐらい普通に生きていけるわけじゃないですか。今の時代はインターネットとか新しいものを絡めて、しっかり地道に続けていくこともできると思うんです。

そうすると、月に30万円の利益が生み出せないような、公益性の高いマーケットなんて存在しないと思うんですよね。そもそも、小さいマーケットって他が参入しないから、競合もあまりいないはずですからね。

脇氏:なるほどね。それはそうかもしれない。そうであっても、誰からも頼まれてなく、「これが自分のやるべき道だ」って言って、自分の人生とお金と時間をかけて、世の中のためになるものを生み出そうとしている人が、世の中には存在している。

そういう人と話していると、「自分ってなんなんだろう?」って突きつけられますよね。「公務員ってなんなんだろう?」って。一定の給料を貰いながら役割を与えられ、その中で「公(おおやけ)のために」って言って、こなしているだけになっていないかって常に考えていますよね。

だからこそ、いろいろな社会企業家の人たちと行政が「もっと一緒にできることはないかなぁ」とか思うんですよね。

一方で、やはり一定の給料を安定的にいただけるのは、公務員の強みだと思うんです。だからこそ、リスクを取れるはず。その時のリスクって本当は何だろうとも思いますが。社会企業家の人たちをはじめとした志ある方々と一緒になって、世の中を良くしていきたいですよね。公と官は違う概念で、公の担い手はもはや「官」である公務員だけではないので。脇雅昭 3-last

【神奈川県庁 脇雅昭氏:第4話】公務員がカッコイイと思われる世の中を創りたい

脇雅昭TOP4

公務員がカッコイイと思われる世の中を創りたい

加藤:脇さんは「公務員がカッコイイと思われる世の中」を創りたいとお話しているじゃないですか。なぜ、そう思っているんですか?

脇氏:昨日、福井に行っていたんですけど「公務員にも、こんな感じの人がいるんですね」って好意的に言ってもらえたんですね。実際には、普通の人が公務員に触れる機会がない。

加藤:本当にないと思います。

若くて想いある人の選択肢から公務員が消える

脇氏:世の中的に、公務員って定時勤務だとか安定とか、なんかちょっと悪いイメージですよね。怠けているイメージ(笑)。マスメディアから流れてくる情報を見ていて、「公務員ってどうせそんな奴だな」って思われている。

そうすると、「この国を良くしていこう!」とか、「人のためにやってこうぜ!」って若くて想いある人は、「公務員なんかになったら、おしまいだ」と思って、選択肢から公務員が消える。そうしたら、「9時17時最高! 安定最高!」って人たちだけが集まってきちゃいますよね。

マスコミの人たちはマスコミの人たちで、想いを持って、世の中のために正義感を持ってやっているのかもしれない。だけど、結果として何が生まれているかっていうと、一生懸命「公務員ダメだキャンペーン」をやっていますよね。

頑張っていない公務員は ボコボコに叩いていい

脇氏:それに対して、できることないかなって思っているんです。いまはマスメディアだけじゃなくて、インターネットメディアもあるし、誰でも発信できるような時代だからこそ、「本当は公務員って、カッコイイんだぜ!」って広めたい。

まさに、この『holg.jp』、すげー良いメディアだと思うから、もっとガンガン世の中に広まってほしい。この前、『Forbes JAPAN』も地方特集なんかをしてくれていますよね。そういう良い公務員を取り上げてくれるメディアが増えたらなと。

もちろん、頑張っていない公務員や悪いことをしている公務員がいたら、ボコボコに叩いてもらっていいんだけど(笑)。でも、それは将来を担う若者に、それが公務員だと思われてしまうリスクも含んでいるということをわかりながら、やって行ってほしいなと。そういう意味でも、頑張っている人たちには、もっと世の中に出て、「おおーすげー!」って称賛浴びてもいいんじゃないかなって。

神奈川県庁での仕事

加藤:神奈川県庁は、5年目ですよね。今までどういう仕事をしてきましたか?

脇氏:最初は広域連携課ってところに8か月。そこで県単独でできないような、他の自治体と連携していくような仕事の調整をしていました。例えば、排気ガス規制を神奈川県だけでやっていても、神奈川県を迂回されてしまうだけ。だから、「関東全体で、やっていきましょう」って仕事をしていました。

次の年に国際課に1年。例えば、外国語しかわからない住民の方でも、医療を受けやすくするために、『医療通訳制度』っていうのを作っていったりしていました。その後2年間、国際観光課でインバウンド関連をやっていました。今年の4月から市町村課ですね。

神奈川県庁 庁舎

神奈川県庁 庁舎

行政だけじゃ世の中を良くできない

加藤:ご自身の中で、「これが成果だ」と思えたことは、何でしょうか?

脇氏:成果としてわかりやすいのは、この2年間でいろいろな協定を結んだことかもしれないです。僕は行政だけじゃ世の中を良くできないと思っているので、『行政×民間』でやっていきたいと思っているんです。観光は民間と一緒にやれることが多い領域でしたので、それぞれが持っている力を出し合いましょうという感じでした。

加藤:それは、例えばどういう協定なんですか?

脇氏:いろいろある中の一つは、ベトナムのH.I.Sで働いているベトナム人の方に、神奈川県庁で働いてもらっているんです。しかも、給料はあっちに持ってもらっているんですね。

BIG BONSAI

脇氏:結局、観光地は海外の人に見てもらうのが一番だと思っていて、「外国人観光客を誘客しましょう」、「プロモーションします」って言ったときに、日本人じゃどうプロモーションしていいかってわかんない。エゴになっちゃうんです。

この前、小田原城の天守閣が新しくなって、天守閣を取材してほしいと思って、ベトナムの新聞社の編集長を呼んだんです。その人に来てもらって、天守閣に向かって行こうとしていたら、彼があるでっかい木の前で止まって「WOW!BIG BONSAI!(盆栽)」って言っていて(笑)。

脇雅昭4-2

加藤:面白い(笑)。

脇氏:あとから、その木を調べたら、樹齢400年の木で、それが折れそうになっているのを鉄骨で支えている。それが、盆栽に見えたと。それで、「日本ってすげーな、そんな古いものを大事にしてるんだ」って感動したらしいんです。

だから、新聞の紙面はほとんど4分の3以上が「日本ってすげー、古きものを大切にしてるよ」と。で、一番下にちょっと「天守閣もあるよ」みたいな(笑)。この感覚って日本人じゃ絶対できないわけです。

インバウンドって、外の人たちから見てもらうことによって、僕らが本来持っている『価値』の再定義化をしてもらっているんです。一見、『無価値』なものの『価値化』というか、そういうことをやる作業なんだなと思ったんですね。

だって、僕らから見たら、ただの木じゃないですか。でも、実は、その人たちから見たら、ただの木じゃなくて『価値』だったんです。

こういったものって、観光的要素だけでなく、今の日本にいっぱいあるんだろうなって。日本人が持っている力だって、まだまだ価値化しきれていないと思っています。

今の時代は、何か新しいものをどんどん求めていっているような気もしますが、そうではなく、僕らが見逃している価値、そういったものを、もう一度見直して価値化していくこと、『無価値の価値化』に色んな方々を巻き込みながら、もっと取り組んでいきたいなと思っています。

【神奈川県庁 脇雅昭氏:第5話】5歳の時に幼稚園の中退を決断

脇雅昭 TOP5-1

自腹で海外に行くようにした

加藤:話が少し戻りますが、H.I.Sベトナムで働いているベトナム人の方に、神奈川県庁で仕事をしてもらうことになりました。これは、どういう経緯で話を進めることができたんですか?

脇氏:海外に行ったことが1回しかない僕が国際観光課長になって(笑)、そんな人間が、国際観光課に入って「外の人間を連れてこい」と言われたので、「ヤバい、自分の能力がバレる」と思ったんです(笑)。

それから、1~2か月に1回ずつ、海外に行くようにしました。いまはアジアを回っています。ただ、自腹で有給休暇を使ってプライベートで行っているので、滞在できても2、3日が限度。そうなると、その国のことはわからない。なので、海外に行く時には毎回、その国で活躍されている現地の人たちと仲良くなるようにしています。そうすると常に現地での最新の情報が入ってくる体制になる。そうした中で出会ったのが、H.I.Sベトナムの支店長さんでした。

その時に「自腹で来るとかアホだね」と思われつつ、「想いを持っている人とやりたいから」って温かい言葉をかけてもらえて、「じゃあ、なんかやろう」というところから始まりました。

優秀な人材は日本で働ける しかも行政だよ

脇氏:お互いに問題を出し合って、課題を出し合ったら、H.I.Sベトナムって200人も現地の方を採用していたんです。海外に出ている他の旅行会社もあるけど、あそこまで現地の人を採用しているところはない。その中で、組織が大きくなる際に、働いている人たちのモチベーションを重要視していたんですね。

そうすると、「優秀な人材は日本で働けるよ。しかも行政だよ」と言えると、社員にチャンスを与えることができ、モチベーションに繋がると。だから、研修費用として見てもらっているんです。

加藤:それは良いですね。行政の持つパワーというか、恐らく、脇さんが民間企業に属していたら、この話は進んでなかったと思います。

H.I.Sさんのニーズを理解し、行政の持つ力を使うことで、一見、『無価値』に見えるものを、『価値化』した、『行政×民間』の素晴らしい事例だと思います。

神奈川県庁にいても全国に波及させたい

脇氏:僕は神奈川県庁にいながらも、どこかに「全国で」って想いもあるんです。だから、神奈川県だけでできるものを作っても、ちょっと物足りないなって思っていたんです。でも、この仕組みだったら、「他のところでもできるんじゃないかな」と思っていたら、案の定、他の都道府県でも今年からやるらしいです。

加藤:良いですね。脇さんはもともと総務省から来ているから、神奈川県庁に来て自分がやっていることを、全国で広げてもらえるというのは一石二鳥ですね。

脇氏:そうですね。しかも、何が良いかっていうと、ベトナムの人が6か月間こっちに住んでくれる。そうしたら、どう考えても神奈川のことを好きになる。そんな人がベトナムに戻って、現地で旅行業の仕事しているんですよ? それって最高の味方じゃないですか?

国から来ていることのプレッシャー

加藤:脇さんは総務省から県庁に来て、35歳で課長になっています。県庁プロパーの方だと課長になるのは、50歳ぐらいですよね? どうしても、「若造が国から来て・・・」みたいな雰囲気って出ませんか?

脇氏:みんなすごくいい人ですが、そう思っている人もいるんでしょうね。でも、「そりゃ、そう思うよね」って(笑)。

加藤:そういうところは、あまり気にならないんですか?

脇氏:いや、気にしています(笑)。「頑張らないと」って思う。でもそう思わなければいけない環境って、ありがたいことだと思うんですよね。

県庁の人が「総務省から来た人だ。ハハー」って従っていたら、その方がおかしい。逆に、僕が「従うことを求める」のも、おかしいと思うんですよね。だから、国から来ているとかはどうでもいいことで、「ここで、自分だからできることって、何があるだろうか」と、常に考えています。

総務省 庁舎

総務省 庁舎

世の中がHAPPYになるのが究極に好きなだけ

加藤:脇さんが「世の中のために」と思えるモチベーションはどこから来るのでしょうか。

「世の中のため」と言っていても、「世の中のために生きている自分はすごい。そうでしょ?」って他人に求める人も沢山いる。もちろん、それが絶対悪ってことではないんです。でも、脇さんは「他人から認められたい」とも思ってないですよね?

脇氏:全然、思ってない(笑)。でも、ある意味、超エゴなんだろうと思っている。世の中がHAPPYになるのが究極に好きなだけ。だから、どこまでいっても自分のためだと思っています。

だって、「ありがとう」って言ってもらったら、超嬉しくないですか?

加藤:すごく、わかります。

5歳の時に幼稚園の中退を決断

加藤:脇さんは、承認欲求を満たされていると思うんですよね。いつから、「世の中のために何かしたい」と思っているんですか?

脇氏:難しい言葉を使いますね(笑)。でも、ちっちゃい頃、寂しかったですよ。実は最初の学歴、幼稚園中退だから(笑)。

加藤:(笑)。幼稚園中退って、どういう経緯でそうなるんですか?(笑)

脇氏:月謝が6000円くらいの地元の幼稚園に通っていて、僕を1年通わせていたけど、父が「その費用対効果が合わない」と(笑)。だから、「もし、幼稚園を辞めたら毎月お前に6000円払う!」と言われたわけです。

5歳の僕は中退を選択したんですが、そうすると、いままでと全く違う環境に置かれる。話し相手は大人しかいなくなるし、そうすると、おのずと成長するじゃない。

且つ、当時、ムチャクチャ勉強させられていたから、同世代の子どもたちと感覚が合わなくなってくる。だから、友達って呼べる友達が本当に少なくて、高校になってようやく、良い仲間に出会えて、そこから人と話すことの楽しさを覚えることができるようになったんです。

人との出会いが最高の喜び

脇氏:僕の分析だと、すごく寂しかった時期から、良い感じでベクトルが変わった。ムチャクチャ寂しかった分、大きな力となっているんだと思うんです。だから、人との出会いが最高の喜びだし、人と人が繋がって、HAPPYになっていくのを見ているのもすごく嬉しい。

でも、ちっちゃい頃の写真を見ると、それもムチャクチャ笑顔だから、もしかしたらオリジナルでそうなのかもしれないですけど(笑)。
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【神奈川県庁 脇雅昭氏:第6話】このままだと そのうち死ぬわ

自分が想像しない明日があると思うと 超ワクワクする

加藤:いまも毎日、夜は人と会っているんですか?

脇氏:そうですね(笑)。

加藤:疲れたりはしませんか?

脇氏:ないです(笑)。だって、『昨日の自分が想像できなかった人』に今日会えている。それって最高じゃないですか。きっと、「自分が想像しない明日がある」と思うと、超ワクワクする。

人の話を聞いていると すごく得した気分になる

脇氏:人の話を聞いていると、なんか、すごく得した気分になる。「こういう考え方ってあるんだ」とか、「こんな仕事しているんだ」って、その人の人生を少し味わえるわけじゃないですか?

そう思うと、他人の存在がありがたくなってくるんです。僕の人生の時間は1回しかないから、そこに力をかけられないんだけど、「この人がかけてくれているじゃん!」みたいな。さらに、「この人と何かやったら面白いことができるんじゃないか」、そういう感覚なんですよね。

人々を結びつける『究極のハブ』で在りたい

脇氏:自分にできることが、いかに限られているのか理解している。だから、自分一人で世の中を良くしようなんて、おこがましい。

僕は、世の中の人々を結びつける『究極のハブ』で在りたいなって思っている。だからこそ、人を尊敬するんですよね。

実は、最初から、人と人が出会う場を作ろうとしていたわけではなかったんです。もともとは、大手企業の会長がいる会に先輩から呼んでもらい、その会長からすごい人をたくさん紹介してもらったんですね。

でも、そうやって紹介してもらった人がすごい人過ぎて、その人を自分の周りのすごい人に合わせたら、その人たちだけで仲良くなって、「自分から離れていっちゃうんじゃないか」みたいな、しょうもないちっぽけなことを考えていたんです。

だけど、人はギブされ続けると変わるんだと思いました。紹介をされ続けて、こんなにすごい人に出会っているのに、それを自分の中にだけ留めようとするのは、罪な気がして来たんです。そこから、自分の周りの素敵な人に、素敵な人を紹介するようになりました。

実際にそうしてみると、素敵な人同士が集まれば、素敵なものが生まれた。そこにハッピーが生まれた。だからこそ、さらにその周りの素敵な人を紹介してもらうようになっていきました。

最初は、「紹介をしてもらえるのは、ハッピーに対するお礼なのかな」と思っていたら、人ってもっと綺麗な生き物で、自分がその輪の中でハッピーになったから、「自分の応援したい人やハッピーになってほしい素敵な人を、純粋な気持ちで応援するために、紹介してもらっていること」に気づいたんです。この正の『想いの循環』は素敵だと思いましたし、もっと、広げていきたいと思いました。

脇雅昭6-2

『志を持っている人』をいかに集めるか

加藤:どういう人たちを結び付けたいのですか?

脇氏:最初は、この人とこの人を繋げたら多分、世の中良くなるだろうなって思って会わせていたけど、全然うまくいかなかったんですね(笑)。だから、飲み会するときも、余計なことをせずに、いかに自分を無にするかっていうのを、すごく頑張っている(笑)。

結局、やり続けていると「あ、こことここが繋がるんだ」みたいな、意外なとこが繋がっていった。自分にはその組み合わせはわからなかった。僕の中の世界は狭いから、僕の世界のベストマッチングは、本当の世の中のベストマッチングではないんだということをやりながら感じていったんです。だとすると、僕がやるべきことは、『志を持っている人』をいかに集めるかということだと思ったんです。

加藤:なるほど。

脇氏:だから、僕は志を持っているかどうかだけをチェックしていて、あとは考えないようにしています。

このままだと そのうち死ぬわ

加藤:ご自身の強みは「自分の感覚を信じ切っているところ」とおっしゃっていますが、これはどういうことでしょうか。

脇氏:端的にいうと、自分が面白そうだと感じたものを、行動に移していくということです。

5年ほど前、「将来どうするか」をまだ悩んでいる時に父が死んだんです。そのときに「人生って限りがあるんだな」と、実感したんですね。『死』を見たときに、逆にすごく『生』を感じたんですけど、そこから自分の中に時間軸が出てきました。

それこそ、社会企業家と会っている中で、彼らは「こんな世界を作りたい」「そのための手段はこれだ」って言っていて、僕もそういう自分の目指すべき姿が言える人になりたくて、2年間くらい悶々と悩んでいたんですよね。

でも、2年間経ったある日、こんなに悩んで辛かったとしても「何にも世の中に対してできてねーじゃん」って思ったわけです。「あ・・・このままだと、そのうち死ぬわ」と(笑)。

自分の直感は 経験から培われた感覚

加藤:そこからどうしたんですか?

脇氏:思いついたことをやっていったんです。思いついたことをやると、次にまた、やりたいことが出てくる。それを何度も続けていって、死ぬ前に振り返ったときに、「俺ってこういうことがやりたかったんだ」っていう生き方でもいいんじゃないかと思ったんです。

そうすると、バーッと視界が開けてきて、ムチャクチャ面白い。ワクワクする世界が広がっていく。だから、『今日思いついた、やるべきこと』を実行していくのがすごく面白かった。

自分の直感って、全くのゼロから生まれているものじゃなくて、今まで生きてきた経験から培われた感覚だと思うんですよね。それを、自分の中で言語化できていないだけだと思っているんです

だから、自分がいま思いつくことは、自分がやらなくちゃいけないことなんだと考えています。それが「自分の感覚を信じ切っている」ということです。

論理は後付け

脇氏:正直、『よんなな会』も全部、直感で進めているんです。それを後で、社会の問題として捉えたり、論理的に説明すると、「こういう仕掛けなんです」と言っている。だけど、それは後付けなんです。

自治体から国に来ている人が、目の前で土日もなく仕事をしている。単純に「せっかく東京に来ているんだから、遊ぼうよー」「東京ってもっといろんな人いるよ」みたいなところが始まりなんです(笑)。脇雅昭 6-3

絶対値が大きい人間を公務員として採用すべき

加藤:最近、ここを変えていきたいと思うことはありますか?

脇氏:公務員の採用です。僕は総務省で採用を担当していたんですが、その中で、絶対値が大きい人間を採用し続けていこうとしていました。多少、方向性が変だったとしても、組織がそれを良い方向に向けることもできるはずだし、それが責任だとも思うんです。

でも、いまは、ともすればそういう大きい人間は「組織に馴染まない」って言って弾かれる傾向があるんです。自分より優れた人を採らなくちゃいけないのに、自分が扱いやすい人間を採ったら、その組織の幅はどんどん狭くなっていきますよね。それが「なんかおかしい」って思っています。

民間のエキスパートと公務員が集まる場を創りたい

脇氏:そういう時に、「民間の採用ってどうやってんのかな?」とか、いろいろと考えないといけない。だから、それこそ一緒に民間のエキスパートの人たちと集まる場を作りたいと思って、『よんなな人事会』というのをやろうと思っています。

他にも、全国の物産で東京に来ている人たちは、ある日突然、「物産をやれ」と言われて来ていたりする。企業で考えたら普通はちょっと有り得ないですよね? それで、3年くらい経ったらまた戻されるわけです。

少なくともそういう仕事がもっとできるようになるために、もっと民間のマーケティングで活躍している人とか、最高の営業マンと言われる人とか、そういう人たちと一緒に考える場作りしてもいいかなあとか。

加藤:確かにそれは良いですね。

【神奈川県庁:脇雅昭氏 第7話】行政のパワーは お金や規制だけではない

脇雅昭 TOP7

国と地方は 必要な人材像を改めて考えなければならない

加藤:ちなみに僕、地方自治体の異動はあんまり良い制度じゃないと思っているんです。

脇氏:そう思います。

加藤:国は国で早くて、1~2年で異動しますよね。あれって短くないですか?

脇氏:短いですよね。

加藤:特に僕がもったいないと感じるのは、いままでの経験を生かせない異動が多いことなんですよね。

普通の民間企業は、特別な事情がないと、今までの実務スキルや知識が生かせない部署には異動させないと思うんですよね。ただ、地方公務員の方の異動の実情を聞くと、結構、多くの方が過去に学んだ実務スキルや知識を、ゼロに近くなるまでリセットしてしまっている気がしています。

脇氏:本当にそう思います。これから先、国と地方の役割分担を進めていく中において、地方の中でも県と市がある。どこの組織に、専門人材が必要なのか、ジェネラリストが必要なのかというのも、もっとちゃんと議論していかなくちゃいけない。

公務員の専門家が育たないから 民間の受け入れる場所がない

脇氏:あと、公務員の人材の流動性がもっとないとダメですよね。

加藤:民間から公務員になる人は結構いても、公務員から民間がないですよね。

脇氏:ですね。どっちもまだまだ必要かなと思ってます。民間の感覚を持った公務員がもっと生まれてくれたらいいし、公務員の感覚を持った民間の人が生まれてくれたらいい。そうすることで、二つの世界がもっと融合していくと思ってます。

加藤:流動性を下げている大きな理由も、異動だと思っているんですよ。自治体の中の3年って、「そこそこやっていて、詳しい」みたいな感じになるじゃないですか。でも、民間企業の感覚では結構厳しいと思うんです。

例えば、民間企業が人事担当者を採用するための面接で「私、10年役所で働いて、3年間人事やっていました」って言われても、年齢と合った専門性を持っているのかと思ってしまう。つまり、「年齢の割には、3年間の人事経験しかないのか」と感じてしまうと思うんですよね。

脇氏:専門家が育たないから、民間の受け入れる場所がないんですよね。

加藤:それでも無理して転職しようとすると、給料も下がり、新しい組織に馴染まなければいけない。公務員の方からすると、そこまでして民間に行かなければいけない必要性がないと思うんですよ。

脇氏:そうなんですよね。

民間と一緒になって 新しい可能性を模索していきたい

加藤:何か良い方法はありますか?

脇氏:人材の部分で思っているのは、これは既に島原市が先駆的に取り組んでいるんですが、例えば、1~2週間でもいいからベンチャーに行くとか。ベンチャーが生きるか死ぬかでやっているような中で、死ぬ気で仕事をさせられるとか。そうしたら、自分たちが普段知らない世界を肌で感じられる。

そこから、人が交流することで『ベンチャー×行政』という、いままであまりない組み合わせで、新しいプロジェクトや連携が生まれてくるかもしれない。1~2週間だから出張扱いにできると思うし、さっき話をした『よんなな人事会』とかで、そういう新しい可能性を提案できたら良いなって思っています。

行政が持っているパワーは お金や規制だけではない

加藤:最後の質問です。公務員で仕事をすることの『だいご味』を教えてもらってもいいですか?

脇氏:「世の中を良くしたい」という、世の中のあるべき姿を、ムチャクチャ声を大にして言えて、それを行いながらもお金を頂いている。もちろん、組織のしがらみがあったり、嫌なこともあると思うけど、本当に大事なことを、仕事を通じて世の中に反映することができる。自分の人生の時間を使いながら、そんなことができるって、最高じゃないですか?

加藤:うらやましいです(笑)。

脇氏:そうですよね(笑)。それに、行政が持っているパワーって、お金とか規制とかそういったものだけじゃないと思っていて、もっと大きな力として、権威付けとか、お墨付きを出すことができる。

加藤:公務員が叩かれている部分があっても、一方で信用がありますよね。

脇氏:その信用は行政が、まだまだ価値を使い切れてないところだと思っています。行政が使えるお金は、これからどんどん減っていくわけじゃないですか? その中で、お金のかからない力をうんと使いたいなと思っているんです。

だから、「BIG BONSAI」じゃないけど、こういう一見、『無価値』と思われているものの『価値化』。そういうところを、これからもっとやっていけないかなと思っています。

加藤:そうですね。行政は『可能性の塊』だと思います。長時間ありがとうございました。

脇氏:こちらこそ、ありがとうございました。

第9回 よんなな会2

集合写真=第9回 よんなな会

編集後記

脇氏は私がいままで出会った人の中で、一番の『人たらし』かも知れない。もちろん、良い意味で言っている。

人間の感じる幸福、もしくは不幸の多くは、人の繋がりを通じて生じて来るものだと思う。脇氏の存在する場は、常に幸福な空気に満ちている。だからこそ、周りに自然と人が集まるのだろう。

脇氏は「行政が本来持っているパワーである『権威付け』や『お墨付き』を使いきれていない」と言っていた。これは全く持ってその通りだと思う。一方で、そもそもの話として、公務員は個人として既に『権威付け』や『お墨付き』をもらっている状況にあると思うのだが、果たしてこのことを自覚して、活用しきれているのだろうか。

公務員は「住宅ローンを組みやすい」だとか、「結婚したい男性の職業ランキングで1位」であることを、私は言いたい訳ではない。重要なことは、「行政組織に勤めている公務員の貴方だから協力しましょう」という感覚が、民間企業や民間人からすると、山ほどあるにも拘わらず、それに公務員が気づいていないという事実にある。ただし、協力を得られるかどうかは、ひとつ重要な条件がある。それは『熱意』ではないか。

民間人である私が言うのも変な話であるが、『民間人×熱意』という組み合わせは、妙に意識が高い、煩わしい、ややもすれば、少し『危ないヤツ』だと思われるリスクがある。

しかし、『公務員×熱意』というのは、文字を眺めているだけで、なにか座りが良くないだろうか。凛としながらも力強さのある絶妙なバランス、と思うのは、私の勝手な思い込みであるかもしれないが、この組み合わせがあれば、世の中に波及させることのできる力は、民間人よりも圧倒的に強いのではないかと感じている。

翻って、脇氏はまさに『公務員×熱意』という武器をまとっている。そういう状態である脇氏が、今後、どのように「公務員がカッコイイという世界」を創っていくのかを想像すると、心惹かれずにはいられない。加えて、何かできることはないものかと、自ずと思わされるのだ。

もちろん、脇氏の挑戦は簡単なことではないのだろう。ただ、その趣旨に賛同し、集まり、熱意を持って立ち向かった仲間たちにとっては、贅沢で幸せな、そして、かけがえのない時間を共に歩むことができるに違いない。少なくとも私はそう確信しているのである。



小泉進次郎と脇雅昭が語る今後の日本と公務員の役割(上巻)

小泉進次郎1
【小泉進次郎氏の経歴】
1981年に神奈川県横須賀市で生まれる。2006年に米国コロンビア大学大学院政治学部修士号取得。2009年に、衆議院議員に初当選。その後、自民党青年局長、内閣府大臣政務官・復興大臣政務官を経て、2015年10月より、自民党農林部会長を務める。

-公務員が批判されることは多々ある。『お役所仕事』という言葉はその典型例だ。だが、我々はその認識を改めるような時代に差し掛かっているのではないか。

2月19日(日)の午後、渋谷ヒカリエで約550人の国家公務員、地方公務員が集まる『よんなな会』というイベントが開催された。

よんなな会 オープニング

この会は、『47都道府県の地方公務員』と『中央省庁で働く官僚』をつなげる目的で年に数回開催される。プログラムとしては大きく2つあり、「著名なスピーカーによる講演」と、「参加者同士の交流会」がセットになったイベントだ。

ここでの一幕で、一際、熱気を増したプログラムがあった。将来、総理大臣の筆頭候補と呼び声が高い小泉進次郎氏と、『よんなな会』の主催者、総務省官僚である脇雅昭氏による二人の対談だ。「同世代の政治家から見る、今後の日本、公務員の役割」というテーマで、30代半ばの二人が熱く語った思いを、公務員だけではなく多くの方々にご覧いただきたい。

理屈じゃないところを持っている人が大好き

【脇雅昭氏(写真左)の経歴】
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。現在は神奈川県庁に出向し、国際観光課長に従事。広く深い人脈を生かして、「よんなな会」を主催し、官僚と47都道府県の地方自治体職員をつないでいる。入省後に受験した新司法試験に合格。

小泉進次郎氏(以下、小泉氏):僕は、公務員の皆さんとは縁が深いんですけど、脇君は今まで出会った中で、最もお顔がワクワクしている公務員ですよ。なんかね、脇君って子ども心が顔に出るじゃないですか。

脇雅昭氏(以下、脇氏):褒めていらっしゃいますよね?(笑)

小泉氏:褒めています(笑)。すごく褒めています(笑)。そこが脇君の魅力だと思っています。だから、つい「くん」って呼んじゃうんです。「脇君、脇君」って。

脇氏:皆の前で言うのもなんですけど、私が総務省に採用された理由を聞いたことがあるんですが、他の人は彼の「ここが良い」って具体的にあるのに、僕だけ「なんか良い」って理由らしいです。無限の可能性だなと(笑)。

小泉氏:(笑)。でも、そこの理屈を越えたところは大事ですよね(笑)。僕が復興庁の政務官の時の秘書官も、採用試験の時に「なんで、この20年間は日本でも失われた20年だったと思う?」という質問を受けたんです。僕の秘書官は答えを・・・「運が悪かったんじゃないですかね・・・」って。

会場:(笑)。

小泉氏:そう言ったらしいんですよ。そうしたらね、面接官も「うん・・・そういうこともあるかもね」って(笑)。だから、僕は理屈じゃないと思ってね、それで彼も採用されているわけだからね。僕は理屈じゃないところを持っている人が大好きです(笑)。

脇氏:ありがとうございます。でも、理屈もちゃんとしています(笑)。

会場:(笑)。

ねぇねぇ、政治って0歳からでも良いんでしょ?

小泉氏:真っ暗だから後ろの方は全然顔が見えないんですけど、お子さんいますよね。さっきから子どもの声がするなって。あ、こっちにいた。見える? すごく良いなと思うのは、こういう会には、普通、子どもがいないじゃないですか。

実は僕、来月に地元で行われる演説のポスターの文言を「赤ちゃんが泣いてもいい。子どもが走り回ってもいい。政治を、もっと身近にしていきたいから。演説会に来てみませんか」としているんです。

それで、最後のキャッチフレーズに「投票は18才から。演説会は0才から」と。そういうポスターを貼っているんですね。そうしていたら、最近ある現象が起きたんです。子どものサッカー大会とか、野球教室とかに参加したり、今日も横須賀に戻って、朝から追浜マラソンを走ってきたんですけど、最近、子どもたちに会うと、「僕のポスター見た?」って聞くんです。そうすると、子どもが「見た!見た!見た! 赤ちゃん泣いても良いんでしょ? 廊下走り回っても良いんでしょ?」って言うんです。だから、「いや、廊下じゃないよ」って話をしながら(笑)。

会場:(笑)。

小泉氏:それと、横須賀に『子ども食堂』ができて、そこを見に行ったら、ひとりの男の子が・・・

客席の赤ん坊:(※突然)ウーウー。

小泉氏:あー、赤ちゃんも会話してくれたみたい(笑)。

会場:(笑)。

小泉氏:キャッチボールできたね(笑)。その、『子ども食堂』にいた子どもが、「ねぇねぇ、政治って0歳からでも良いんでしょ?」って言ったんですよ。

脇氏:すごい。

小泉氏:これを経験すると、やっぱりメッセージってすごく大事だと思うんです。だから、今後、この『よんなな会』は皆さんの家族やお子さんが、一緒に参加するような会になってもらいたいなと。

脇氏:そうします。

小泉氏:(客席の赤ちゃんに向かって)今日来てくれて、ありがとうね。

脇氏:確かに、地方から出向で国に来られている方も多くいらっしゃって、ご家族と一緒にこっちに来られているんですよね。そうすると、その方の奥様や旦那様、「パートナーのネットワークがどうなっているのか」と、心配しているところがあるんです。まぁ、次回はこの倍の規模の会場を借りますので、奥様や旦那様を連れて来ていただければと。

小泉氏:そうやって呼んで、子どもたちが我々の前を走り回っても良いじゃないですか。僕はね、そういう場を増やしていかないと変わらないと思っているんです。

なにか恩返しができたら

小泉氏:ところでね、多分これだけ公務員の方が一堂に会する場って、世の中にないですよね。

脇氏:この規模はないかなーと。

よんなな会
小泉氏:だって、僕が復興庁の政務官、内閣府の政務官に就任をする時、退任をする時に、役所の皆さんへ向けて、大臣と一緒にご挨拶をするんですね。復興庁だって、内閣府だって一堂に会したって、こんなに集まらないですからね。みんなそれぞれの仕事がありますから。そう考えると、『よんなな会』ってすごいですよね。何でこんなこと始めたんですか?

脇氏:僕は総務省から熊本県庁に出向していたんですけど、熊本県庁ではいろんな人たちに、いろんな人を紹介してもらって、大きなネットワークができたんですね。その後、総務省に戻って来ると「自治体職員の方が、土日もなく庁舎に籠ってすごい仕事をしているな」と、「なにか僕に恩返しができたらな」って思ったんですよ。

今、すごく『地方創生』っていう言葉が出てきて、いろんな施策をされていると思うんですけど、その中で巨額なお金が国から地方に流れて行っているんです。

でもなんか・・・それを使う人たちに同じ1億円が来たときに「うわー、まじかよ。また1億来た・・・なんかやらないと」と思うのか、「この1億を使って、この地方をどうやって盛り上げようか」と思えるかで、結果が全然違うだろうなと。

そうすると、地方創生って、もっと[人]っていうところを重視していかなければいけないんじゃないかなと思ったんです。その時に、まず僕にできることが何かと考えたら、同じような立場で来ている人たちが集まる場を作ったら、それがまず一歩目なんじゃないかなと思ったんです。今回で9回目です。

小泉氏:(※客席に向けて)脇さんは良い顔して話しますよね(笑)。絶対、選挙出た方が良いと思う(笑)。

会場:(笑)。

脇氏:いやいやいやいや(笑)。

小泉進次郎 脇雅昭1

小泉氏:だから、僕が思っているのは、『よんなな会』はね・・・脇君の将来、選挙に出るときの地盤作りじゃないかと(笑)。

脇氏:違う。違う。違う・・・(笑)。

小泉氏:え? 違う?(笑)

脇氏:違います(笑)。いやー、本当に僕は公務員の中にいながら、公務員の人たちと一緒に頑張って、日本を良くしていきたいと思っているんです。

小泉氏:まあ座りましょう(笑)。僕がコーディネーターじゃないですか(笑)。どうぞ、どうぞ、どうぞ(笑)。

脇氏:恐縮です(笑)。台本には、いろいろ書いてあったんですけど、流れが全然違います(笑)。

日本はチャレンジャーに厳しい

脇氏:今日、実はドキドキしながら(小泉氏を)お呼びしたんです。というのは、政治の世界ってすごく行政と近いじゃないですか。でも、みんなの心の中に「政治は政治」、「行政は行政」、この壁みたいなものがすごくある。

こんなに近くにいるのに、通い合えてない感じがもったいないと思って、そうした時に同世代である30代が一緒に何かできたらと思うんです。

小泉氏:脇君って、僕と何個違いだっけ?

脇氏:一個下です。

小泉氏:脇君が、僕の一個下だよね。

脇氏:はい。多分、僕の方が上に見えると思いますけど(笑)。

会場:(笑)。

小泉氏:僕もね、さっきから「脇君、脇君」って言いながら、「もしかしたら年上だったらどうしよう」って思いながら話していて・・・。大丈夫ですね(笑)。じゃあ、34と35歳ということで、脇君でいこう(笑)。

脇氏:お願いします。

小泉氏:この世代が何か役割を果たすということが必要ですよね。アメリカを見ていてもね、トランプ政権のキーマンはクシュナーと言われていますよ。彼と僕は同い年ですからね。イヴァンカ(トランプ大統領の娘)も同い年でしょ。そういったことを含めても、この世代の当事者意識というものが、すごく大切な時代になってきている。

特に、技術の進歩も早い。今までの価値観とは違う。そういったことがいっぱい出てきている中で、若い人の力をどうやって社会に実装できる国になるかというのは、僕はすごく大事だと思っていますね。

そんな中で、最近のいろんなニュースを見ていて、賛否両論あると思うんだけども、ちょっとこれはどうなのかなと思うのは、東芝の事件です。

あんまり具体的な部分に言及するといろんな影響があるので言いませんけども(笑)、これを見ていてホリエモンのショックを思い出すんですよ。ホリエモンの場合は粉飾じゃないですか。東芝の場合は不正会計でしょ。

世の中に与えたインパクトとか、さまざまなことを考えながら、あのニュースを見ていて僕が思うのは、日本という国はエスタブリッシュメント(既成勢力)に甘い。チャレンジャーに厳しい。こういう価値観を変えないといけないと思います。

どの職業に就きたいかではなくて、どう生きたいか

小泉氏:アメリカは時価総額のランキングが10年したら一変しますよね。今まで存在しなかった企業がボーンと入ってくるような。でも、日本はそういう国じゃないじゃないですか。ずーっと変わらない。就職人気企業のランキングも変わらない。ここを含めて、変えていくチャレンジをしなければいけないと思っています。

今日、文科省の方もいると思いますけど、これから学校側に本当に考えて欲しいのは、大手の有名企業に就職する力ではなくて、転職できる力をつけて欲しいと思います。そして、暗記力よりも検索力をもって欲しいと思う。そして、どの職業に就きたいかという問いではなくて、どう生きたいかということを問う。それが決まれば、おのずと道が決まりますよ。

仮に、2030年に人工知能によってホワイトカラーの職業の50%が代替されるとしたって、「俺はこう生きたいんだ」って思いさえあればやっていけると思うんです。人工知能が席巻するといわれる、いわゆる士(サムライ)業と言われる会計士さんとか、社会保険労務士さんとか、税理士さんとかの職業もありますよね。

もし、「そういった世界のところに自分がいきたい。だけど、人工知能が席巻するかもしれない」という状況でも、「俺はこう生きたいんだから、人工知能に負けないように頑張るだけだ」っていう自分の中での納得感。自分への説明がつくじゃないですか。

そういうことを含めて、僕らの世代が用意しなければいけないことは、僕らの世代だって追いつけないこと、次の世代の当たり前のための環境整備というのを、今からどうやってできるのかというのが、この時代のこの世代に問われているんじゃないんですかね。

「俺はこのために生きたな」と思って、人生を終えたい

脇氏:そういう「誰かのせいではなくて、自分に何ができるか」という考え方って、とても大事だと思うんですけど、その考え方に至ったきっかけはありますか。

小泉氏:まず、政治家の世界に進んでいること自体が、もうリスクの中の生き方じゃないですか。明日、解散って言われたら、明日クビですから。そういう世界にいると、これだけいろいろなものを犠牲にしながら、自分の中でも抱えざるをえないストレスとかもある。だけど、いろいろ含めて自分でこの道に決めた。そうしたら、中途半端なことはしたくないと思うじゃないですか。

脇氏:僕も、5年前に父が死んでですね。人が死ぬ瞬間を見たんですけど、死を見て、逆にすごく生を感じたんです。自分が生きている時間を、何に使っているかってすごく大事なことだなと。そうすると、何かやった方が良さそうなものがあった時でも、僕の時間を使って、「これをやる意味は本当にあるのかな」と思うようになったというのはあります。

小泉氏:何歳まで生きられるかはわからないですけど、「俺はこのために生きたな」と思って、人生を終えたいじゃないですか。だから、そういう風に思えるような日々を過ごしたいと思いますよね。

小泉進次郎と脇雅昭が語る今後の日本と公務員の役割(中巻)

小泉進次郎 脇雅昭

公務員は政治にとってのシンクタンク

小泉氏:僕みたいな政治家の立場からすると、官僚や公務員の皆さんの存在って本当に大切なんです。やっぱり、日本はアメリカみたいにシンクタンクとかがないですから、実際にこうやって政治の中で、どっぷりと公務員の皆さんと一緒に仕事をするんです。これは国家公務員、地方公務員に垣根なく、皆さんが政治にとってのシンクタンク的な役割を持っていて、日本では今後もあまり変わらないと思う。

これは、いままでマイナスに評価をされてきたところはあるんですよ。シンクタンクがないから、政権交代が起きても、公(おおやけ)の世界に流動性がないということはもちろん課題なんです。

公務員の生き方に流動性が足りない

小泉氏:僕は今回の文科省の天下りの問題だって、大きな流れの一つで言えば、公務員の皆さんの生き方の中に流動性が足りないと思っている。この流動性をもっと高めないといけないというのは、働き方改革の一番のエッセンスだったと思うんですよ。これは民間だけでなく、公務員の世界も同じだと。

だけど、少なくとも霞ヶ関の皆さん、公務員の皆さんの政治家に対するインプット。それと、僕らから見えていないところを見てくれているところ。そういった、切磋琢磨を含めたものって、僕はもっと肯定的に評価しているし、僕にはないものを公務員の皆さんは本当に持っていますよ。

県の職員のことは悪人。国家公務員のことは極悪人

脇氏:この『よんなな会』をやっている趣旨は、地方創生、日本を元気にしていくうえで、「人」ってすごく大事だなと思っていて始めたんです。ちなみに、「人」というところに注目して、小泉さんが作られた『地方創生人材支援制度』という国や民間などから地方に人材を派遣する制度、あれはどういうきっかけでやったんでしょうか。

小泉進次郎 脇雅昭2

小泉氏:きっかけはもう間違いなく東日本大震災なんですよ。僕がずっと被災地を回っている中で、岩手県の釜石市に派遣で行き、副市長になった嶋田さんという財務省の官僚がいるんですね。

彼は最初、副市長ではなかったんだけども、それが功を奏したんだと思います。いきなり副市長として財務省から来ると、やっぱりお膳立てされるじゃないですか。現地の役人からしてみたら、国家公務員でしかも財務省の官僚が来て、もうそれだけでお神輿の上ですよね。だけど、そうじゃない形でいったことが彼にとってはプラスで、結果的にいろいろ巻き込まれてこき使われたんです。

その中でも、やっぱり優秀だから目立つんですよね。そしたら、いきなり市長から「お前、副市長やれ」ということで副市長に上げられた。それで、外から入って来るNPOとかボランティア団体、企業とか、そういった皆さんと町をつなぐような動きをやってすごく感謝されたんですよね。恐らく、東北の被災地の村とか町を、財務省の官僚の方で見たことない人はいっぱいいますよね。

市区町村から見ると、県の職員のことは悪人。国家公務員のことは極悪人と思っているところも、一部ある中で(笑)。

脇氏:今日この場に来ているのは、極悪人の皆さんということですね(笑)。

小泉氏:極悪人(笑)、市区町村からすると。

将来の種まきとしての人材交流

小泉氏:それで、「どんなもんが来るのか」と構えていたのに、それが一転して「嶋田さんいいね」となったんです。何か言えばすぐ誰かをつないでくれるし、いろんなアイデアを持っているし、パッパと仕事を捌いちゃうから。

これと同じようなケースで、霞ヶ関の人間が被災地の副市長や、副町長として送り込まれていて、すごく感謝をされているのを見ていたから、僕が地方創生の担当になった時に石破大臣に、「これ、全国展開しませんか」と言いました。

霞ヶ関にこもっている国家公務員の中にも、現場を見たいと思っている人間が、きっといるはずだと。そういった人たちにとってもプラスだし、地方の行政にとっても国家公務員とのお互いの理解が深まる良いツールになるんじゃないかなと。

それと、今回この地方創生人材支援制度で地方に行っている皆さんの中には、帰ってこない人が一部出てくると思いますよ。片道切符というわけじゃないけど、現場で志が燃えちゃって。一部何人かそういうことを予感しています。どこの誰とは言えないけど(笑)。

だけど、多くの人が帰ってきますよね。それで20年後、そういった経験をした人が霞ヶ関の中で出世して、役所の中で権限を持って組織を動かしていくときに、そこに行ったということが本当の意味で生きる時が、将来くるんじゃないかと僕は期待しています。種まきですね、だから。

地方公務員には、その地方のプロになって欲しい

脇氏:今その制度では、2年間地方に行くんでしたっけ?

小泉氏:原則は2年ですね。

脇氏:2年間経って、その人が戻ってしまった後には、その地方がどう自走していくのかは考えられていますか。

小泉氏:それは地方の皆さんの意識もあるんじゃないですか。ずーっと毎回毎回、国家公務員を送られ続けることが正解なのかというと、僕はそうではないと思うんです。やっぱり地方行政のプライドってあるじゃないですか。

僕が地方の公務員の皆さんに期待したいことは、地方のプロになって欲しいですよね。ときどき残念だと思うことは、僕なんかもかなり全国を回っているんです。それでも、今日もマラソン大会に出たとか、しょっちゅう地元回りをやっているんですよ。

そういった中で、ときどき行政センターの館長とか、地方の公務員さんと会った時に、僕の方が人を知っているんですよ。そして、僕の方が地域で何があったとか、誰々さんが亡くなってこの前お葬式があったことを知っていて、それを話した時に、「え、そうなんですか?」ということを言われたりすることがあると、ちょっと残念ですね。

小泉進次郎 脇雅昭3

だって、僕なんかは全国の活動があるじゃないですか。国会もあるし、地元の活動もある。地方公務員の皆さんは自分の地元にいられるじゃないですか。もちろん、いっぱい大変なことがあるのもわかりますよ。だけど、フォーカスできる立場にある中では、誰よりもミクロのことをわかって欲しい。そこって、すごく期待をしたいところですね。

あとは、本当に地元のことを好きになって欲しい。この前、陸上の為末さんと話していたんですけど、その通りだと思ったんです。それは、「どうやったら早く走れるか」とか、「どうやったら勝てるか」ということは教えることができても、「勝ちたい」という気持ちや、好奇心のない選手には何を教えても意味がないという話で、これは公務員の皆さんも同じだと思うんですよね。

「公務員の皆さんに何を期待しますか」って問われた時に、期待することはいくらでも話せるけど、思いのない人に言っても響かないじゃないですか。

思いのある人と仕事したい

小泉氏:今、僕は農林部会長なので、農水省と仕事することがすごく多いんですけど、すごく信頼している若手のチームがいるんですよ。僕が部会長になってから事務次官に頼んで、若手チームを作ってくれないかと。僕を支えて欲しいと。やっぱり僕と局長では年も全然違うし、そうやって支えてくれる若手の皆さんのやってくれていることに感謝しています。

皆さんはわかると思いますけど、役所の中に「この問題だったら、この人に聞け」みたいなのってありますよね。『ミスター○○』みたいな人。一つの例をあげると、農水省の中に『ミスター畜産』というのがいるんですよ。もう、この人に畜産のことを聞けば何でも出てくるみたいな。歴史の証人なんですよ。

その人と牛と豚の話をした時に、僕が胸を打たれたことがありました。彼は、「部会長、牛はいいんですよ。牛はいいんですよ」と、心を込めて言うんです。だから、「牛の何がいいんですか、豚はダメなんですか?」と聞くと、「やっぱり牛ですね」と。

「じゃあ、牛のいいところを教えて下さい」って聞いたら、こう言うんです。「部会長、いいですか? 牛はですね・・・人が食べない草を食べて、人が必要な栄養分のある牛乳を生産してくれる、奇跡の生き物なんですよ」と。

そこで、こう聞いたんです。「なるほど。じゃあ、豚はなんでダメなんですか?」と。その答えが・・・「だって、豚は僕らが食うものを食うんですよ」って。

会場:(笑)。

小泉氏:・・・という会話があったんですよ。この話の中身をどう受け止めるかは別として(笑)、僕の中には少なくとも、この人の牛に対する愛は伝わったわけですよ。そういう瞬間に政治家としては、この人と仕事をしたいと思いました。思いがあるから。そういう思いを持ってくれる公務員の方と会うと、一緒に仕事をしたいと思います。

思いのある公務員の方と出会うのはすごく嬉しい

小泉氏:時に、偏っている人もいますよ。この人こういうタコツボの中で生きてきてしまったから、こういう発想しかないんだなと。何言っても聞いてくれない。それはよくないけど、思いのある公務員の方と出会うのは、僕はすごく嬉しい。何かあったらその人に聞く。レクもその人を指名します。

小泉進次郎 脇雅昭4

先ほどの話とまた別にね、『ミスター土地改良』という人がいるんですよ。

会場:(笑)。

小泉氏:今度、土地改良法の改正法案を国会に提出するんですけど、その時にその人はこう言ったんです。「部会長、この法律はですね。土地改良やってきた人間にとっては・・・40年の悲願なんです」。そんなの聞いてしまったら、「その仕事に圧倒的な思いを持っていたんだ」と肌感覚でわかるじゃないですか。

さらにもう一つ、僕はオリンピックのパラリンピック対応も含めて、日本の農業の中で国際認証を広げるってことをやっているんですけど、その『ミスター国際認証』っていうのがいるんですよ。

会場:(笑)。

小泉氏:あと、最近見つけたのは『ミセス国際規格』っていう人がいて、「ルールメーカーとして、日本は世界に出ていかなきゃいけないんだ」っていう強い思いを持って、日本の農業の規格を国際規格化することにものすごい情熱を持っている人がいるんです。

最近、その方とレクで出会ったので、「今度、局長じゃなくて、あなたが僕にレクをしに来てください」ということを言いました。僕はそういうやり方をしています。

脇氏:今度、よんなな会にミスターとミセスの人たちに全員来てもらいましょう!

小泉氏:面白いと思います(笑)。面白い!(笑)。あと、もう一つだけね、僕が政治家になってから今でも忘れないほど、圧倒されたレクをやってくれた官僚がいたんです。これは経産省の方なんですけど、僕がまだ野党の時代ですよ。その時に国会の中の部屋にいたんですよ。そこでレクの予定があったんだけど時間があまりない。そうしたらその人が、レクを始める前に何て言ったかというと、「小泉先生、1分コース、3分コース、5分コース、10分コース。どれでレクすれば良いですか? 合わせて話します」って言って。「あー、じゃあちょっと悪いけど1分で」って言ったら・・・

会場:(笑)。

小泉氏:分厚い資料を用意してきた中で、めちゃくちゃ端折りながら、「ポイントはここと、ここです」という1分なりのレクをやって、「ありがとうございました」って言って、パっと帰っていったんですね。なんかね・・・かっこよかったんですよ。

脇氏:かっこいいですね。

小泉氏:プロだなぁーって。

脇氏:ミスター・・・何ですかね(笑)。

小泉氏:・・・ミスターレク(笑)。

会場:(笑)。

上下関係を気にせず、わかっている人には答えて欲しい

小泉氏:プロ意識を感じますよね。そういう方と会うと、すごく嬉しいですよ。あと、レクで局長と一緒に話す時に、後ろの席に若手の人が座っているじゃないですか。局長が答えに臆している時に、「本当は私答えられるのに・・・」って雰囲気の時ありますよ。そういうときは、せっかく来ているんだから答えようよって思います(笑)。

脇氏:みんなを見てくれているってことですね。

小泉氏:僕のレクの時は、わかっている人は即、答えて下さい。そこから個人的な縁がつながりますから。

脇氏:ミスター・ミスになって下さいってことですね。

小泉進次郎と脇雅昭が語る今後の日本と公務員の役割(下巻)

小泉進次郎 脇雅昭5

プーチン、トランプ、金正恩、習近平を見下ろせるように

脇氏:ここからは質疑応答にさせていただきます。会場からも質問をさせていただければと思いますが、質問のある方はいますか?

ではそこの方。

経済産業省勤務:2つ程あります。1つ目は、小泉さんはいつ総理大臣になりたいのか。2つ目は、誰が地方創生をやるべきだと思うか。国なのか、自治体なのか、民間なのか、住民なのか。

小泉氏:ありがとうございます。さすが、経産省らしく絞られていますね。

脇氏:そして、1点目は仕込みじゃ絶対に聞けないやつですよね(笑)。

小泉氏:仕込みじゃないってことが皆さんにもわかりますね(笑)。

いつというのは、政治家には決められないと思います。ただ、「天の時」「地の利」「人の和」という『天地人』っていう言葉がある通り、その立場になって自分が耐えうるのかっていうことは考えています。

例えば、いつもイメージするのは目の前にプーチンがいて、隣にトランプが座り、その隣に金正恩、さらに隣に習近平。この4人と面と向かって座った時に、自分が見下ろせていないといけないなと。それだけの自分に鍛え上げられるか。自分はどういうところまでいけるかなと。

今回、自分が農林部会長になることは全く想定していなかったんですけど、この世界に来て本当に良かったと思うのは、自分の幅が広がったし、この中で目まぐるしく動く権力闘争もそうだし、そういったところの経験は本当に大きいですね。

うちの大将はああ言っているけど、ふざけるなよ

小泉氏:今日もしかしたら外務省の人がいるかもしれない。僕は外務省の皆さんには日本のプライドをずっと持ってもらいたいなと。去年プーチン来たじゃないですか。3時間遅刻ですよ。怒って欲しいですよね。ローマ法王とか、エリザベス女王はプーチンが遅刻しても待つかもしれないけど、日本はそんな国じゃないよと。3時間も待って、「ようこそ」と言う国じゃないよと。

もちろん、総理はそんなこと言えません。だから、あのとき僕が見ていて想像したのは、「自分が外務省員で山口にいたら何をやっていたか」。僕が思ったのはね・・・「部屋の風呂の水を抜くな」と。

小泉進次郎 脇雅昭6

会場:(笑)。

小泉氏:いや、ホントに、ホントに。あと、水しか出なくするとか(笑)。なんらかの抗議の意思を外務省員として伝えるのが仕事で、その魂を持ってもらいたいよね。総理が「ようこそ」って言うのはいいと思うんです。だけど、その裏でカウンターパートになる職員同士の話では「うちの大将はああ言っているけど、ふざけるなよ」っていうことを誰か言ったのかなと思ってですね。胆力・・・それをひとりひとりの国家公務員には持ってもらいたい。日本を背負っているんだと。

自分が強烈に圧倒されるような人を、役所には支援して欲しい

小泉氏:2つ目の質問が地方創生ですよね。僕がすごく思うことは、日本はもっと個人に対して投資した方が良い。これは自分が内閣府政務官のときにも思ったんですけど、国家戦略特区を使って自動走行車の後押しをやっていたんですよ。とにかくガンガンやろうと。

だけど、どうしてもね、「自動車業界がみんな合意のもとに動くなら」って発想なんですよ。そうじゃなくて、「やれるところに突っ走らせよう」、「やれる人にやらせよう」っていう発想が大事だと。もちろん、これは行政の中での公平性の観点もあるから、難しい部分もあると思うんだけど。

僕の中で確信めいたものがある。日本は個人の力をもっと高めなければいけない。地方創生の人材も素晴らしい人が沢山います。いろんな人に会う立場ですけど、いつも僕が期待しているのは、僕のことを圧倒してくれる人と会いたいんです。有名人の中には、ほとんどいないです。だけども、地方にはいる。強烈に圧倒される人。そういう人たちを役所はしっかり支援をしてあげて欲しい。

「なんでアイツにヒトやカネを突っ込むんだ」っていうのは地方の声でもあると思う。いわゆる町づくりは、「よそ者」「若者」「馬鹿者」じゃないとできないという言葉もありますけど、僕は本当にそう思う。そういった人たちに対する集中的な投資が、これからどこまでできるかが鍵だと思います。

日本は経営者の質を上げないといけない

小泉氏:経済の部分でも、日本は経営者の質を上げないといけないんだと思うんです。僕が最終的に、なんでこれだけ民間企業がお金を使わないのか。なんで、さっき名前を出した企業が、ああいった負債案件みたいなものを掴まされたのか。それによって会社が立ちいかなくなるのか。

申し訳ないけども、突き詰めれば経営者の質ですよね。その経営者の質という部分で、日本は世界に伍していけるのか。共助っていう部分はすごく大切だと思いますよ、すごく大切で強化しなきゃいけないけれども、同時に、個の力を高めるということを意識して、教育や施策も考え直すべきじゃないかなと思います。

誰よりもリスクをとらなかったら、責任を果たせない

環境省勤務:小泉先生は今の世代だけでなく、将来の世代のことについても考えていらっしゃるように見えます。そういうことを意識されているのでしょうか。

小泉氏:ありがとうございます。うちの親父も、お爺ちゃんも、ひいお爺ちゃんも、政治家として生きてきた。それが世襲議員として、僕の初めての選挙ではものすごく批判された。

でも、ありがたいことに当選させてもらって今があって、ありがたいことに日本で一番票をいただいている立場がある。そのお蔭で今の自分があると考えた時に、「誰よりもリスクをとらなかったら、責任を果たせない」と思っています。

だから、TPPも野党時代からずっと賛成をしていて、神奈川県の農協の中央会から推薦ももらえない。そして、世襲批判もあるから、自分が選挙で負けた時は政治の世界から退出すべきだという思いがある。だから、僕は比例で立候補はしません。単独立候補という形で、小選挙区からしか立候補しない。負けたら終わり。

そういう覚悟を持たないと、世襲批判もその通りだと。それは常に意識しています。この道を切り拓いてくれたひいお爺ちゃんは、トビ職の親方で、全身入れ墨が入っていたんです。大臣になったときに、入れ墨大臣って新聞に書かれてね。トビ職の親方が政治家になった。そのことに比べればね、自分はひいお爺ちゃん以上にリスクとらなきゃいけないですよね。だから、元はなにもないんだと、常にそう思っています。

地方公務員の人たちには、自分たちのことを過小評価しないでもらいたい

小泉進次郎 脇雅昭9

農林水産省勤務:過去の対談の中で、国と地方の人材交流をこれまでの枠以上に積極的に行なっていく『現代版参勤交代』のような制度を作りたいとおっしゃっていました。その上で、地方公務員に求めるものは何でしょうか。

小泉氏:『現代版の参勤交代』を制度化したいという思いは今でも変わりません。もしも、この『よんなな会』がその母体になりうるとしたら、これからネットワークをどう形成して、それを毎年毎年どう高みにもっていくのか。

皆さんご存知の通り、役所の中にはOB会ってあるじゃないですか。そういったものの比じゃない規模でできるわけです。もしあれだったら、次回が第10回ということで、現代版の参勤交代の一つの事務局的なハブとして、この『よんなな会』がどういう機能を果たせるのか、という議論をやってみても面白いんじゃないのかなと。

僕は内閣府とか復興庁にいたから、霞ヶ関の役所の中にはかなり多くの地方公務員がいることがよくわかっています。中には本当は2年で戻らないといけないのに、ものすごく優秀で、頼られている人もいる。ある地方公務員の出向元の市長に、僕が電話をかけて、「大変申し訳ないけども、あと一年彼を貸してくれ」というお願いをしたことがあるんです。

市長からは、「本当は戻したい」と言われたんですけど、「わかりました」と呑んでもらった。その彼はようやく地方へ戻り、この前、僕はそこに視察に行って、彼に会ってきましたよ。そういった形でね、地方公務員の方が霞ヶ関に来て、思いを持って仕事をしていたら、必ず地方へ戻っても、つながる縁ができると思うんです。

地方公務員の人たちには、自分たちのことを過小評価しないでもらいたいと思います。特に人口規模が小さくなればなるほど、役所の存在って大きいんですよ。

もう役所がなければ、町づくりから日々の生活から、いろんなことが成り立たない。そういった中で、「地方公務員はこうだ」っていう、世間で叩かれたりするイメージを『よんなな会』で一回ぶっ壊して欲しい。

今までやらなかったことも含めて、地方公務員ができることっていっぱいあるはずなんです。そういう人材が出てくることが、僕は地方創生の中でも行政の皆さんの力はすごく大きいなと。自信を持ってください。

挨拶しませんか

脇氏:さっきから出続けていた、「残り1分」というカンペが出なくなりましたね(笑)。

小泉氏:残り何分なんだろう(笑)。ただ、最後に僕からひとつお願いがあります。どうか皆さんね、役所の中で、警備員さんとトイレ掃除の方に挨拶しましょうよ。僕はね、復興庁と内閣府にいた時に、それがすごく残念だったんです。まるで存在しないかのように、ほとんどみんな挨拶しないでしょ。小泉進次郎2

だけど、僕はそれがすごくイヤで、一度会議の中でもあえて言ったことがあるんです。「皆さん、挨拶しませんか」って。僕にはそんな思いが子どもの頃からすごくあるんですよ。だから、中学校の時も学校の用務員さんとすごく仲が良くて、卒業式の日に式が終わったら、外に用務員さんがみんな並んで待っていて、「小泉、本当に卒業おめでとう!」って皆が涙を流してくれた。

それで、内閣府の退任の日ね、当時、役所の8号館の警備員さんたちとすごく仲良かったんですけど、警備員さんから僕の秘書官に、「今日、私たち考えていることがあります」って耳打ちがあったんです。

まず、役所の皆さんがお見送りをしてくれるじゃないですか。そうしたら最後ですよ、出口のところで、警備員さんたちがズラっと並んで待ってくれていて、「小泉政務官!お疲れ様でした。敬礼!」ってバッとやってくれて、それは涙が出そうになりましたね。

ちょうどこの前バレンタインデーがありましたけども・・・

脇氏:ちょっと気になりますね、その話(笑)・・・。

会場:(笑)。

小泉氏:議員会館の、衆議院の第一議員会館の担当のトイレ掃除のおばちゃんがいるんですよ。もういつも仲良しで、その方がくれたのは明治のダークチョコレートだったんです。僕の中で一番心に残っているものの一つなんです。

もし、自分の家族が用務員さんだったら、自分の家族が警備員さんだったら。ほとんどの役所の皆さんが無視をして、エレベーターに乗って来るんですよ。無視してトイレするんですよ。

僕ね、本当に基本的なことだけど、その役所の文化は変えてもらいたい。『よんなな会』の皆さんは、やっていると思いますよ。やっていると思いますけど、あえて言います。これから警備員さんと用務員さんには、気持ちの良い挨拶をしてもらいたいなと思います。

脇氏:みんなぜひ。「じゃ!やります!」って方は拍手をお願いします。

会場:(拍手)

脇氏:ありがとうございます。みんな、これでやってくれますね。

小泉氏:良かったです。期待しています。本日の皆さんとのご縁、本当にありがとうございました。

脇氏:長い時間でしたけど、本当にありがとうございました。
※対談終了

 

-振り返ると、小泉進次郎氏から公務員へのメッセージとして多くの示唆があった。小泉氏から放たれる圧倒的な言葉の重みが会場を包み込み、良質の興奮を生み出していく。多くの公務員にとって刺激的な一日になったことは間違いない。

『ミスターレク』『ミスター畜産』『ミスター土地改良』『ミスター国際認証』『ミセス国際規格』。この言葉の響きだけで、お目にかかりたいと思う面々である。その道のプロである『ミスター○○』として、志を持って働いて欲しいというメッセージは、公務員に対するエールでもあり、一方でプレッシャーにもなるのではないだろうか。

公務員の志や、あるべき姿。これに対して、直接、政治家が提言することはあまりない。国会議員と官僚の関係は常に良好なわけではないし、それは官僚と都道府県の関係、そして、都道府県と市区町村の関係においても言えることだ。しかしながら、今回の『よんなな会』では政治家である小泉進次郎氏と、国家公務員、地方公務員が一堂に会して、国のあるべき方向を模索し、かつ、共有しているように思えた。

ときに、『公務員叩きビジネス』という言葉があるほど、公務員は厳しい批判の対象となる。確かに、公務員は清廉潔白であるべきとは思うが、公務員も顔のある人間なのである。1700を越える自治体組織のどこかが不祥事を起こした時に、まるで鬼の首でもとったような行き過ぎた批判は、悪戯に士気の低下を招くばかりか、国益をも損ねているのではないだろうか。

そんな中、間違いなく公務員にも新しい風が吹き始めている。この日、休日にもかかわらず、渋谷ヒカリエの巨大なホールで550人という、志の高い公務員が時空間を共有した。そして、この同じ日、私の知る限りでも、多くの公務員が全国各地で等しく研鑽に励んでいた。これらを勘案するに、現在の日本における公務員への評価は果たして適切なものであるのかと、今一度問うてみたい。

戦前には西欧諸国に伍していくため、戦後には敗戦からの復興を主導するため、公務員は日本という国に大きく貢献してきた。いつの時代であっても、公務員には常に世の中を幸せにする力があり、そして、一方ではその責務がある。そんな、やりがいのある仕事を担うことのできる公務員が、この会を通じてさらなる一歩を踏み出せるのだとすれば、それは疑いもなく、国民の幸福に寄与することになるのではないだろうか。

脇雅昭



https://gaishishukatsu.com/archives/98345

「死ぬほど考える。それが僕らのやりがい」 総務官僚・脇雅昭さんに聞く(上)

2008年に総務省に入省し、キャリア官僚として活躍する脇雅昭さん(34)。現在は神奈川県庁に出向中で、産業労働局の初代国際観光課長として、外国人旅行者向けのインバウンド観光施策の立案を担当しています。同時に47都道府県の公務員が集う通称「よんなな会」を主催するなど、精力的に活動しています。

東京大学法科大学院出身の脇さんは、弁護士か官僚か悩みに悩んだ挙句、総務省に入り、働きながら司法試験に合格したガッツの持ち主です。官僚を選んだ理由や、ご自身のキャリアの軌跡についてうかがいました。

「6000円は、お前に投資する!」父の一言で幼稚園を中退

――脇さんは東大法科大学院卒、国家公務員試験一種と新司法試験のダブル合格というご経歴をお持ちですが、これまでのキャリアの軌跡を教えて下さい。

そうですね、僕のこれまでの選択の原点は、幼稚園時代にあると思います。

――どういうことでしょうか?

実は僕、幼稚園中退なんですよ。出身は宮崎県で、僕は6人兄弟の末っ子。父が50歳、母が45歳の時の子供です。親はずっと、地元で商売をしていました。父は4人目までは猛烈な仕事人間だったそうですが、自分が40歳になった時に「これからは子供の教育に力を入れたい」と言って仕事を辞めたんだそうです。で、僕の教育も自分で見るようになったという訳です。

僕が通っていたのは地元の幼稚園で、月謝は6000円くらい。父はもともと商売人なので、費用対効果を考えてしまうのですが、5歳くらいの僕を1年通わせてみたけれど、どう考えてもあの幼稚園には6000円の価値がないと。そこで、5歳の僕は「お前に投資した方が価値があるから、辞めたら毎月お前に6000円払う!」と言われたわけです。

――脇さんはそれでどうされたんですか?

もちろん飛びつきました。肩もみでお小遣い10円、なんてやっていたころでしたからね。

6000円は全額、紙芝居につぎ込みました。当時紙芝居が不思議で仕方なかったんですよ。文字も見ずにあんなにしゃべれて、みんながそれに聞き入ってくれて、喜んでくれるという。上達してきたら、なぜか辞めた幼稚園に行って、先生達に披露したりもしていましたね。

――否応なしにプレゼン能力が上達しそうですね(笑)

それもそうですが、幼稚園中退は、強制的にそれまでとは違う環境に放り込まれる、という体験にもつながったと思っています。

幼稚園を辞めると、自分の世界から5歳児がいなくなるんですね。周りに大人しかいなくなる。そうすると、大人と話すしかなくなります。

お昼になると、大人の男性達は仕事に出ているので、団地のおばさん達の井戸端会議に参加するしかない訳です。中身が分からなくても「ふんふん」って聞き入っていました。誰かを喜ばせることだけでなく、大人との接し方、間合いの取り方、環境の重要性を学んだと思います。

「まず『遊べ』」と言われて腐った大学時代

――思いがけず幼稚園時代のお話をうかがってしまいましたが、脇さんが高校卒業後に進学したのは、京都大学ですね。どうして京大を選んだのですか?

本当は、高校の指定校推薦で早稲田の政経(政治経済学部)に行く気満々だったんです。ところが、高校の先生に「お前には(指定校推薦は)やらん。実力で行け」と言われて。だったら、それより上に行ってやるしかないじゃないですか。なので前期・後期で東大と京大に願書を出して、京大に合格した、という訳です。周りに東大・京大を目指すような人がいるような高校ではなかったので、すごく孤独の中で勉強していた記憶があります。

指定校推薦をもらえないと分かったのが高校3年生の夏を過ぎてから。そこから一日15時間以上必死に勉強しました。今だから笑い話になりますが、当時は大人を恨みました。

――なるほど。京大での大学生時代はいかがでしたか?

そんなこんなで血を吐く思いで合格した大学なのに、入ってすぐに先輩に「何をしたらいいですか」と聞いたら「遊べ」と言うんですよ。周囲を見ても、みんなその通りにしている。「みんな、自分より楽をしてても合格できたんだな」と思って、環境がいかに大事かを痛感しました。みんなが同じ目標を目指す環境と孤独で戦う環境とでこんなにも大きい違いがあるのだなと。ここでも改めて、「環境」の重要性を痛感しました。

「みんな」のためって誰のため?

――将来の進路については、弁護士と官僚でずっと迷っていらっしゃったそうですね。学部を卒業してから、神戸大学法科大学院時代に国家公務員試験Ⅰ種(国Ⅰ)に合格、そのあと東京大学法科大学院を再受験して卒業するも、総務省で官僚の道を歩んでいらっしゃると。その理由を教えてください。

まず弁護士と官僚で迷った理由ですが、高校の時くらいから、「みんなのために仕事をしたい」という漠然とした思いがありました。でも誰のことを思い描きながら、仕事をするんだろうって。僕は、今まで出会った人に対してしか、心からの衝動は形成できないんです。それで、「具体的なみんなって誰なんかな」と思ったときに、浮かんだのは自分の親でした。

僕は6人兄弟の末っ子です。4人目の兄弟までは、まだ若くて強い親を知っていますが、僕の場合は、親が年老いて、憧れの存在から守るべき存在に変わっていく瞬間があったんです。

弁護士も、目の前の人を助ける具体的な喜びがある。それにいつでもどこでも仕事ができる。親の介護が必要になった時に、戻れたらいいなと。一方、官僚は親の死に目にも遭えない仕事だと思っていました。一番大切な親すら守れないのに、何が「みんなのため」なのだろうかと。

それで、弁護士になろうと思って法科大学院に入りました。でも、官僚も諦めきれなくて、国Ⅰを受験し合格しました。だけど、今度は親のことが整理できなくて。国Ⅰに合格した年には、面接を受けに品川まで新幹線で行ったのに、引き返すなんてこともやってしまいました。

――最終的になぜ、官僚を選んだのでしょうか。

最初神戸大学の法科大学院に入学したのですが、やはり「実際に制度や通説を作った教授に学びたい」と思い始めて、東大の法科大学院に入学しなおしたんですね。東大の法科大学院で3年間学んで思ったのは、法解釈には限界があるということ。それ以上は立法裁量の問題。その時に無力感を感じたんです。誰かが作った法律を目の前の人のために解釈していくことも重要だけれども、それ以上に、そもそもどうあるべきかといった仕組みや、幼い頃から感じていた「環境の重要性」を一から考えていくことが大事なんじゃないかと。そう思って、官僚の道に進むことに決めました。

ただ、せっかく法科大学院を出たので、資格はとっておこうかなと思いまして。総務省も賛成してくれて、入省後の研修の時期に、研修が終わると東大の自習室に行って、勉強していました。

――入省直後ですよね。その時期は仕事に慣れるだけで大変ではないのですか?

法科大学院の友人達と勉強してましたから、京大受験を一人でくぐり抜けた苦しさに比べれば、それほど大変ではなかったです。環境って大事だなと改めて思いました。

自分の中に、いかに具体的な「みんな」を作っていくか

――脇さん自身が総務省に入って、大変だったことを教えてください。

実際に総務省に入ってみると、「ゼロから制度を作る」なんてありえない訳です。歴史的に認められてきた利益と、変化を求める現代の実情との間で、線を引く。「0か1か」で割り切れる作業ではないです。すでに存在する制度を前提としつつ、どう新しい枠組みを作っていくかに価値がある。

もちろんタクシー帰りもしばしばでしたが、京大受験の時、死ぬ気で勉強したのを思い出してがんばりました。力になったのが、仲間の存在です。

4月から6月くらいまでは全省庁人事院の研修。省庁の障壁にしばられないように、全省庁合同で行われます。そのあと、総務省では新人を地方に出向させて、国だけに染まらないようにしてくれます。

そうすると、仲間が全国に散らばっているので、会える人もどんどん増えていきます。制度設計の上で、マスデータはかなり大事です。でも、現実には「平均的な日本」なんて存在しないんですよ。論理的に美しいものが世の中をハッピーにするとは限らない、と言ってくれた先輩もいて、ハッとしました。

僕一人で捉えられるのは、ある種偏った日本です。でもそこに、全国に散らばっている同期や先輩の知見を合わせると、より的確に日本を「平均的な日本」ではなく、ありのままの「でこぼこの日本」として捉えられる気がします。

論理的には正しそうに見える答えでも、「そうかもしれないけど、俺がいった○○県だと、これじゃ絶対うまくいかない」みたいな。もう場所によって全然違う。経験に勝るものはないなと改めて感じました。でもその中で、仕組みとしてこの国をどうしていくのか、どこで線を引くのか。死ぬほど考える。それが僕らのやりがいだと考えています。

「飲み会も制度設計なんです」

――官僚と聞くと堅苦しいイメージがあるのですが、同期や先輩とのつながりが強いんですね。

自動的につながりができていく訳ではありません。同期とのつながり、民間とのつながり、今日本に起きている様々な課題を解決していくためには、いかにいろいろなネットワークを作って、いろんなセクターが集まって解決していくかが大切だと思っています。

全国の仲間・ネットワークを作っていくために、自分が発起人になって「よんなな会」という団体を作りました。47都道府県の地方公務員と中央省庁で働く官僚がこれまでに1200人以上参加しており、定期的に会合を実施しています。1回あたり300人以上が集まるので、かなり大規模です。まあ、飲み会なんですけど(笑)、ただ飲むだけではなくて、公務員、民間問わず活躍している志ある人に講演してもらう時間も設けています。

目の前の仕事に追われていると、そういった視野が狭くなってしまいがちです。講演が終わった後に、ちょっとだけでもいいから「俺にできることあるよね、やらなきゃならないことがあるよね」という感想を持ってもらえる場にしたい。そして一歩でも半歩でも踏み出してほしいと考えています。そのために、入ってきた時の会場の音楽や演出を工夫して雰囲気を作り出したりとか。そういった意味では、飲み会も制度設計なんですよ(笑)

――これまでに印象に残っている講演者はいますか?

小泉政権時代の元官房副長官ですね。歴代の最長8年間在任した人で、官僚にとっては霞が関の伝説みたいな人なんです。

その人の言葉で、「部下に『ちゃんと考えたのか』と聞くと『はい』と言う。『じゃあ考え抜いたのか』と聞くと『いいえ』と返事が返ってくる。その最後の一歩が大切なんだ」という言葉が印象に残りました。

もともと農家出身の人で「ごぼうを掘る時も、最後の最後が大変なんだぞ」みたいな話をする訳ですよ。

中には「はいはい知ってるよ、最後の一歩が大事なんて」という人もいるかもしれないけど、あの人はなぜあのクラスになれたんだろう、って思いまして。

古典なんかを読んでいても、同じことは書いてあるじゃないですか。感謝しなさいとか。でも、知識として知っているだけでなく、実際に最後まで考え抜いている人、それをやり続けてる人ってどれくらいいるのかなと。知っていることとやるということには大きな違いがあって、やるということがいかに難しいか。公務員組織の中のトップオブトップが何を見て何を考えていたのか、僕個人も非常にエンパワーされましたね。

後編⇒「学生はマリオでいうところのスター状態」 総務官僚・脇雅昭さんに聞く

「学生はマリオでいうところのスター状態」 総務官僚・脇雅昭さんに聞く(下)

総務省の官僚で現在神奈川県庁に出向している脇雅昭さんは、過去に総務省の大臣官房秘書課で人事採用を担当した経験があります。採用面接について「論理はテクニック」「大切なのは、『ワクワク』」だと話す脇さん。後編では就活生へのアドバイスや官僚と民間企業の違いについて、お話をうかがいました。

インタビュー前編 「死ぬほど考える。それが僕らのやりがい」 総務官僚・脇雅昭さんに聞く(上)

原動力は「ワクワク」にある

――総務省では、採用も担当されていたそうですね。今の就活生に何か言いたいことはありますか。

「ワクワク」を大事にしてほしいです。就活になったとたん、「軸」とか「やりたいこと」を言語化するように求められますよね。みんな頭がいいから、それに対して答えを出そうとする。そして頭がいいゆえに、答えができてしまう。「地方を活性化させたいんです。だから、総務省か経産省に行きたいです」とかね。

でも実際には、総務省と経産省では全くアプローチが違うんですよ。きれいに言語化したことによって、今度は思考が「地方を活性化させるためには、どの仕事をすべきなんだろう?」ってなるんです。最初は、単純に「ワクワク」するからやりたかったはずなのに、いつのまにか自分が立てた論理に支配されちゃってるんですよね。

たしかに論理は、人を動かす時に必要です。面接では「人に納得してもらう論理構成をしろよ」ということで、「筋を作れ」「軸を作れ」と推奨される訳ですが、自分の本当の気持ちまで閉じ込めてしまうのは違うと思うんですよね。

外資金融、外資コンサル、商社、そして国家公務員――。それら全てから内定をもらえる優秀な学生さんも、中にはいるかもしれません。でも、その職業の中で「自分が何にワクワクするのか」「それを原動力にして、この日本をどう動かしていきたいのか」。それが大事なんです。

――民間の人気企業と官公庁の両方に内定して迷ってしまう優秀な学生もいるようですね。脇さんから見て、官公庁と民間企業に共通点はありますか?

どちらも「どれだけハッピーを提供できたか」が価値だと思います。以前、総務省を受けにきた学生さんに、「外国人観光客に津波を伝えるためのアプリをどうやって普及させるか」についてワークショップで考えてもらいました。実はこれって、少し問題を変えると「民間企業がバレンタインで、チョコをどうやって売るか」というマーケティングの話と変わりません。

公(おおやけ)と民間って、必要な能力はそんなに変わらないと思います。よく「『公はあるべき姿』『民間はお金稼ぎ』。お金稼ぎが嫌だから私は公務員になりたい」なんていう人がいますが、違います。

世の中の人がお金を使うのは、ハッピーが得られるからですよ。民間でお金儲けしている人達、例えばアップルなんかは、世の中が潜在的に求めていたiPhoneを生み出し、ハッピーをたくさん生み出したから売れた。その結果、儲かった訳でしょ。世界規模で幸せの価値を出しているんですよ。公はよりみんなの幸せ(公益)を考えなければいけない訳ですから「お金稼ぎしたくないので公に」というのは違いますよね。

――民間でハッピーを作り出せない人が公に行っても同じ、ということですね。では官公庁と民間企業の違いについても教えて下さい。

色々あると思うのですが、一つは、



https://an-life.jp/article/872

「自分の命を何に使うか」に理屈はいらない。
公務員がカッコいい社会を目指して。

脇 雅昭さん/「公務員がカッコいい社会」作り

小さい頃から何事も徹底的に取り組み、勉強、ゲーム、アカペラ、ロースクール、仕事をとことんやってきた脇さん。総務省から神奈川県に出向して働く傍ら、全国の公務員500人以上が参加する交流会を主催しています。公務員3年目の春、父の死をきっかけに「命を何に使うか?」という問いに直面した脇さんが出した答えとは。お話を伺いました。

やるんだったら徹底的にやる

宮崎県都城市にある山之口町で生まれました。6人兄弟の末っ子で、一番上とは20歳くらい歳が離れています。親はスーパーを経営していました。父親は仕事人間で家庭をあまり顧みない性分でした。しかし、4歳上の姉が生まれた時、それではいけないと教育に力をいれるようになり、父は仕事をやめ、姉と僕はスパルタ教育を受けました。親の元で勉強ばかりしていたので、いつも一緒でしたね。

教育方針が一風変わっていたのかもしれません。ゲームをやっちゃだめって言われていたんですが、どうしてもやりたくて友達から借りてきたんです。隠れてやっていたら、親に激怒されました。「コソコソやらずに、やるんだったらやりきれ。」と。1週間学校を休まされ、夢中でゲームをやりました。

ピアノや書道などの習い事をしながら、勉強も徹底的にやりました。公文の進度では全国2位になりました。しかし小学校3年生の時、「なんでこんなに必死にやんなきゃいけないんだ」と思い、勉強をしなくなりました。威厳ある親への反発心が大きかったですね。

小中学時代は、周りから浮いた存在でした。親や兄弟と歳が離れている影響で、大人や年配の方と話す機会が多かったんです。中学ではサッカー部に所属していましたが、心から話が合う相手がいない寂しい学校生活でした。一転して、高校からは話があう相手も多く、お祭り男と呼ばれ、周りとも仲良くできるようになり、親友ができました。

充実した高校生活の中で、将来のことを考えた時に、国家公務員と弁護士に関心がありました。国家公務員については、意味があるのかわからない勉強を変えられるかもしれないと思ったからです。教育というサービスの受給者として、教育のあり方に疑問を持っていたんです。一方、弁護士に対しては単純に面白そうだなと、ボヤッとした印象でした。最初は指定校推薦で進学しようと考えていたんですが、先生からお前は実力で行けと言われてしまって、そこからは1日15時間以上勉強しました。最終的に、京都大学法学部に入学しました。

人生が発露するかっこいい大人が理想

大学ではアカペラサークルに入りました。最初はカラオケ仲間が欲しくて入ったんですけど、そこでたまたま先輩のバンドに入れてもらえたんです。テレビ番組の影響でアカペラが流行して、そこそこ有名なグループでした。

僕にとって初めてのステージは大手百貨店でのクリスマスライブ。結果は散々でした。ライブ中、お客さんを見ずに、先輩の顔色ばかり伺っていたんです。終演後、リーダーに「下手でもいいからとりあえず笑え。楽しそうにしていたらお客さんも笑うから。」と言われました。

それ以降、どんなに下手でも満面の笑みで歌うようになりました。そしたら、ファンの方から「楽しそうに歌っているから元気が出る。」との声を頂くようになったんです。誰かを楽しませたい、喜ばせたいなら、まずは自分が楽しむ。そんなことをアカペラから学びました。

本格的に卒業後の進路を考え出し、大学4年の時に、弁護士の勉強を始めました。それがとにかく面白かったですね。アカペラで全国的に有名になって、プロにでもという話もあったんですが、歌は稼ぐものというより楽しむものだという思いが強くて、そのまま勉強を続けました。

同じ頃、同級生に誘われて、国家公務員の説明会に行きました。そこで登壇した総務省の採用担当の方が、僕たち学生にこう言ったんです。「一緒に日本を良くしていこう。」と。このおっちゃん、カッコいいと思いました。40代の方でした。その方の目や立ち姿に人生が発露していて、自分も20年後、学生の前でこんなことを言える大人になっていたいと、憧れましたね。

最後まで弁護士になるか、官僚になるか、迷いました。最終的に進路を決めた大きな理由は親の存在です。あんなに強かった親が年老いていき、いつの間にか守るべき対象に変わっていたんです。もし介護が必要になった時には近くにいたい。官僚は多忙で親の死に目に会えるかわからないこともあり、弁護士を選びました。

卒業後は神戸大学のロースクールに通いました。優秀な若い先生方と勉強熱心なクラスメイトと勉強ばかりの日々で、無茶苦茶仲良くなりました。しかし、先生を交えて議論をしても、先生自身が考えた説ではないので、最終的には「こうだと思うよ」と推測で話が集結してしまう。自分たちがやっている議論に意味があるのかという違和感がありました。

どうせやるなら徹底的にやりたい、教科書を書いている先生に習いたいと、再び受験勉強をし直して、東京大学のロースクールに編入しました。課題がある説に対して、先生に詰め寄ってかわされたこともありましたが、何かを変えられるかもしれないという可能性にワクワクしましたね。

一方で、勉強すればするほど、法解釈には限界があり、それ以上は立法の問題であることも知りました。徹底的に勉強していたからこそ、無力感がありました。そんな時、頭に浮かんだのが「一緒に日本を良くしていこう。」と語った総務省の方の姿でした。カッコいい公務員にワクワクした思いが蘇り、官僚になることを決意したんです。それからは総務省一択に絞って官庁訪問をして、試験を経て無事内定をいただくことができました。

死を目の当たりにして生を感じた

入省後、4ヶ月の研修を経て、8月から熊本県庁に出向しました。せっかく勉強したのだからという思いで弁護士試験も並行して受験し、1年目の10月に合格することができました。翌11月に財政課へ異動になりました。県庁勤務の場合、通常1年目は市町村周りの仕事をして、2年目に財政課に配属になるんですが、僕の場合は3ヶ月後に異動でした。

財政課にとって11月は一番忙しい時期で、配属した矢先に熊本県の警察予算400億を査定することになりました。僕の場合「査定って何?」ってところからのスタートでした。朝4時まで仕事して、一旦帰宅し、朝8時半に出勤。週末も働いていました。職員一同で命を削って議論をしましたね。「本当にこの制服いるんですか」とかいうレベルまで。しんどかったですね。なんとか議論をまとめて予算案が完成したのは2月でした。

しかし、そこに書かれているのは費用名と費用の数値のみだったんです。それを見て愕然としました。自分たちがした議論は最終的には数字でしか現れないんだな、うわ、やばって。本当に大切なのは、その数字の先にいる人、そこで働いている人が何をモチベーションにしているのか、どう保っていけばいいのかなんじゃないのか。命削ったのに何してんだろうと悔しい気持ちでした。

2年目からはそこを意識して査定していきました。それでも、自分の命をかけたことと成果物の距離を感じ、本気で辞めたいと思うようになりました。3年目に総務省に戻り、採用担当になりました。辞めたいと思っている自分が学生に向かって職場の良さを伝えなければいけない。最初は辛かったですね。けれど、総務省の志望理由を話す機会が自然と増え、原点回帰できました。20年後に「日本を一緒に変えよう」って言いたくて入ったんだよなって。

翌年の3月、父親が亡くなりました。友人の結婚式に出席するためたまたま帰省していたので、最期を見ることができました。普段テレビの中では人がどんどん死んでるじゃないですか。それに対していちいち心を痛めたりしないし、自分からは遠い世界で起きていることだったんです。でも、いざ目の前で死を見た時に、むちゃくちゃ「生」を感じて。「うわ、俺、死に向かって『生きてる』んやわ」って思ったんです。

そこから全てのことに対して、自分の限られた時間、命を何に使っていくのかという発想に切り替わりました。うちの親が一番くれた、僕にとって大事なものは「やっぱり人って死ぬんだよ」ということ。そこから「どう生きるか」をめちゃくちゃ考えるようになりました。人はいつか死ぬし、それがいつかわからない。この2つがある中で、じゃあ今日を一生懸命生きないとなって。だた、どう生きるかについての明確な答えは出てきませんでした。

自分を動かすために理屈は必要ない

自分の人生で何をすべきか考えている頃、民間と交流を深める中で社会起業家の方たちと出会う機会が増えました。彼らは、本当だったら公が解決しなければいけない課題を、自らの意志でリスクを背負ってまで取り組んでいました。尊敬を抱いたのと同時に、彼らのように人生をかけるものがほしいなと思いました。仕事では総務省で約50年ぶりの会計制度改革を担当させてもらっていて、やりがいを感じていました。それでも、自分はどこに向かいたいのかわからない日々が続きました。

2年くらい悩んだある日、ふと足元を見たら前に進んでいない自分に気がついたんです。仕事は精一杯やってたけど、でもなんか頭のなかでは悶々としてて。何かを探し続けて2年が経ってて。気づいたら、頭のなかで気持ちよくなってただけで、何も世の中に生み出してない。この想いをプラスにできてねえじゃんって思って。だから、そっからもう「やめよう」って思ったんです。頭のなかで考えてても何も変わらないって。それを受け入れたって感じです。

受け入れたら、むっちゃ開けてきたんですよね。たぶん、一生懸命理屈を整理しようとしてたんです。でも、理屈は誰かを説得して動いてもらうために必要でも、自分を動かすために必要なわけじゃないなっていうのに気づいて。だったら、動かせる自分を、自分が思いつくままにやってみようと。そうしたら次にやりたいことが出てくるんですよ。さらに次ってどんどん生まれていって。思いつくってことは、自分の中に、「言葉にはできないけれど何か感じてるもの」があるんですよね。だから、その自分の感覚っていうのを大事にしようって思って。それを続けて、死ぬ前に振り返ってみて「あ、俺こういう人生だったんだな」って思える人生も、それはそれでなんかハッピーなんじゃないかなって。

そんな想いから、仕事とは別で、全国の公務員を集める交流会を開催し始めました。もともと、周りの若手公務員と働く中で違和感があったんです。今後地方の中枢で働く、いわばエースである彼らが、たいした休みもなく、気合と根性で仕事をやり遂げている。でも、彼らにとって今必要なことは、課題を我がこととして捉え、どういう人たちと解決していくべきか考えること、色々な人との繋がりを作ることなんじゃないかって。とはいえ、勉強会に顔を出さない公務員に対して僕ができることはなんだろうって考えたら、飲み会だって。そんなきっかけでイベントを「よんなな会」と名付けて、公務員を中心とした大規模な交流会として開催するようになりました。

公務員がカッコいい社会にしたい

現在は総務省から出向して、神奈川県庁で国際観光課課長をしています。外国人観光客の誘致の責任者で、戦略を立てています。観光とは人が動くこと。つまりは人の心をどう動かすかだと思っています。仕事とプライベート関係なく、出会った方と一緒に施策を考えたり、新しい協定を結んだり、民間の方と手を組んだりしています。世の中がどうやったらハッピーになるかという勝手な使命感でプライベートと仕事の区別なく動いています。胸を張って言えますが超自己満足です。だから楽しめるんだと思います。

将来の目標みたいなのはないですね。どこに向かっていくかわからないし、わからないことを今は楽しんでいますね。今日の自分が想像できない明日があるって、無茶苦茶わくわくするなって。それは、僕が「これだ!」って思えるビジョンを持てなかった人間だからこそ、日々を手段じゃなくて、目的化していこうって考えてるんですよね。場当たり的って言われるかもしれないですけど、でも一生懸命、今のベストを尽くすことを毎日やってるんですよね。

でも、強いて言うなら、公務員をもっと知ってもらうことをしたい。公務員がカッコいい社会を作りたいなと思います。社会起業家の方たちと話していて、公が持っている価値が想像以上にあることに気づいたんです。彼らと出会うことで見えてきた公務員の価値を世の中にちゃんと伝えるためにも、もっと頑張ってる全国の公務員を皆さんに知ってもらうことが大事だと思っています。

作成日:2017年05月25日

脇 雅昭/「公務員がカッコいい社会」作り

総務省から出向し、神奈川県庁で勤務。個人の活動で、47の都道府県の地方公務員と中央省庁で働く官僚が500人以上集まる「よんなな会」を主宰。

【2017年7月9日イベント登壇!】another life. Sunday Morning Cafe 〜あなたの未来を変える生き方〜


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