2025.01.21 研修「地域内での資金循環の仕組みから」山口美知子氏

人と人、人と自然をつなぐ~地域内での資金循環の仕組みから~
公益財団法人東近江三方よし基金 常務理事兼事務局長 山口美知子 氏

公益財団法人東近江三方よし基金 常務理事兼事務局長 山口 美知子(やまぐち みちこ)氏
 滋賀県生まれ。東京農工大学大学院修了。1998年に林業技師として滋賀県入庁。林業事務所、琵琶湖環境政策室などを経て、2012年東近江市職員となり、公益財団法人東近江三方よし基金の創設に関与。2019年から同法人の常務理事に就任。2021年3月に市役所を退職。一般社団法人kikito、NPO法人まちづくりネット東近江等の活動に参加。
■公益財団法人東近江三方よし基金■
 地域内での資金循環の仕組みを作るための「市民コミュニティ財団」として設立。地域からの寄附、休眠預金を活用した助成事業、ソーシャルインパクトボンド(SIB)を活用した資金支援を通じて東近江市における社会課題解決の事業者を支援している。

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旧の八日市市
今の職場とは関係のない仕事をしていた。
10年ちょっと県職員。10年ちょっと市職員。コロナ禍

2030年東近江市の将来像
「人と人、人と自然」のつながりが増えて欲しい ということがわかってきた。

毎年の予算が毎年カットという状況
合併特例債があるが、これ以降、どんどんお金が減っていくからと言われていた。
自分の公務員人生は、毎年オカネをカットしていけ、ということだった。

社長はおカネのことを見ている。
町で回っているオカネはたくさんあるはず。行政予算だけを見ていたら回らないと感じていた。

東近江市でのオカネの順癌を調査
地域経済循環分析
http://www.env.go.jp/policy/circulation/

行政の予算の10倍の予算が地域で回っている(資料3ページ)
東近江市総生産(/総所得/総支出)4,446億円【2013年】

民間消費の流出:(消費の約23.1%)約734億円
エネルギー代金の流出:
約294億円(GRPの約6.6%)
石炭・原油・天然ガス:約68億円、石油・石炭製品:約131億円、電気:約77億円、ガス・熱供給:約18億円

ポイント:4つの資産(地域資源ストック:フローを支える基盤)
自然資本(環境)、人的資本、人工資本(インフラ)、社会関係資本(野々村さんの話)
この4つが自治体で全然違う⇒ 分析
単独だけでもダメ。この4つが潤沢であれば資本を生み出しやすい

野々村さんが、葉ボタンを売りまくた時は:社会関係資本があったから
葉ボタンをを、空いている土地で育てられたのは。自然資本(環境)があったから


資金循環におけるベースの考え方

Point①地域資源を活用して魅力向上
・歴史文化遺産の磨き上げ
・地域の人財の磨き上げ
・インフラの有効活用
Point②地域資源を再評価し保全・再生
・森林、河川の保全・再生
・生活弱者対応と地域共生の仕組みづくり
Point③ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の醸成(※ 日本は弱い)
・市民意識変化による社会変革
・セーフティーネットの構築

なぜ、あなたの町は企業誘致が成功するのですか?
「あの会社、拡大するらしいで」という情報が入ってくる(ソーシャル・キャピタル)

地元の信用金庫はエリアが限られている。
昔は、預かっているオカネに対して貸し付けているオカネが80%くらいあった。
今は、40%くらい。どこへ行っているのかといえば、国債をかったりして、東京に流れている。

地域のためになってないぞ!
「東近江三方よし基金」の設立
SIB事業

成果発表 

東近江の森と人をつなぐ あかね基金助成事業開始
東京の企業が、東近江に森を持っていた。

この広域財団の特徴
特定の誰かがたくさん出して作った財団ではない。
一人3000円の寄付で770名から、300万円ないと財団をつくれない。
どんな町になったらいいかを書いてもらった。
当時、公務員。まちづくりをやっていると思っていたが、反省点がある。

80代「こんなふうに次の若い子に託せるなら寄付するわ」
自分たちがお金を持っているわけではないので、ツラい仕事。
誰か問題を気づいた人がやる時に、応援する仕事。

支援者(個人・企業)

東近江三方よし基金

社会的事業者

私なりに考えた
地域は、あれもかれもやっている余裕がない。何かをやって一気にいろんなことを解決するしかない。

東近江の森と人をつなぐ「あかね基金」

行政には上がってこないものが基金には上がってくる

<特徴>
・分野や立場を超えた連携事例(森と福祉、森と子ども、里山とエコツアー等)
・事業の継続性を意識した提案と伴走支援
・環境、地域経済、社会課題の視点から成果評価を導入

(先ほどの野々村さんの活動や!)
一般社団法人TeamNorishiro
「山主と働きもんのコラボレーション事業」

さとやまNannies
「さとやまNannyプロジェクト2021」

東近江トレイル実行委員会「東近江トレイルツアー」

継続性を考えている
「補助金が無くてもやらなアカンねん。補助金があったらここまでできる。なくなったらここまでする」

東近江に再びイヌワシを呼び戻すプロジェクト協議会
イヌワシが生息しなくても森はあるがイヌワシの生息する森はそれだけで地元の自然遺産である。

イヌワシ生息するためには、木々が伐採されていないといけない。
ホッタラカシでは、生息できない。
(人と森との関係性の変化 → どうする)


休眠預金等活用
行政はからんでいないので知らない議員が多い
平等に分配するという考えではないので、公が入ってこない。
https://www.janpia.or.jp/
資金分配団体が、東近江三方よし基金
野々村さんの所は、実行団体

東近江三方よし基金は、申請の段階から伴走する。
申請・プレゼンが下手では補助がもらえない。
おかしいが。

休眠していた預金を使って行う出資ってなんだ?
リターンを目的とする出資は世間にいくらでもある。
今は、金融機関の論理で、とは言っても「リターン」だねとなる気がする。

休眠預金を活用した助成事業
①新型コロナウィルス緊急対策活動支援事業

いろんな意見を聞いて回る時に、あのコロナ禍で、活動をしていたかどうかで、ホンマモンかどうかがわかる。2020年4月
「あとでオカネはなんとかなるわ」=やらずにおれるか!?

成果報告会オンライン配信(YouTube)https://youtu.be/xyqXJdrJi7s

1.一般社団法人がもう夢工房
事業名:東近江ワンペアレントサポートプロジェクト
助成決定額:6,000,000円
活動概要:東近江市内のひとり親家庭の数が約900世帯。そのうち600世帯が支援を必要としており、食材を届ける仕組みづくりを関係機関が連携して実施する。
毎月1回の食材提供と支援を実現する組織化を目指す。現在申込者数約260件

コミュニティーセンターに協力を得たが、その職員は、うちにそんな食に困っている人はいませんよ、と言っていったが・・・・

コロナ禍は、単年度事業だった


実行団体01 一般社団法人TeamNorishiro : 東近江市
事業名空き家を活用して命を守りつなぐ場づくり
対象者• 現行の福祉制度を利用できない、もしくは利用が難しい引きこもり状態にある若者や、障がいのある人(働きもん)
• 障がい福祉や支援の現場で働く若者
社会課題• 働きもんの緊急時の利用しやすい避難場所、地域で成長するための経験を積むことができる場所が地域には存在しない
• 現場で働く若者が学び合える場所や、多職種の人々との交流機会がない
• その結果、地域全体で障がい福祉の現状を理解し、対応する広がりが皆無の状況
事業概要• 空き家である「大萩基地」を利用して、「暮らしの応援の場」を提供
• 地域の多様な人々に対して障がい福祉について理解を深める機会を提供
し、彼らを支援するための応援団を増やす
• 彼らの暮らしや働きをサポートし、地域全体の活力を
(資料 P10)


支援体制とつながった対象者の人数
手を握る → 手を握り続ける → 地域につなげる

つながった対象者数:
食と心の支援:30名/急的な暮らしの場の確保:17名/一人暮らしの経験:23名/働く場所と違う交流の経験:90名/定期的に働く経験:薪8名、着火材34名/親の学ぶとつながりづくり13名)
(若者の学ぶとつながりづくり延256名/多職種の学ぶとつながりづくり265名)

野々村さん。
数字なんかどうでもええ。数字を大事にしているわけではない。というが、数値化しないと他者に説明が出来ない。
今日、講義を受けた皆さんが受けた共感をどうやって他者へ伝える?

【制度世界】
組織の立場(担当者)、没個性、断続的、制度内での役割、、専門性
部分的・機能的な人間関係、組織の損得(利己)、孤立


【ごちゃまぜ世界】
個人、個性的、継続的、取組に合わせた役割、汎用性、全体的・包括的な人間関係、善意と内発性(利他)、連携


休眠預金等活用は、インパクト評価にオカネもつけるとなっているが、数値化されない事業にはオカネがつかないということ!!
EBPMとは逆のこと。

★★★数字化できることが大事なのではなく、本当にやりたい事、何を目指しているかが大事!!!!!!!


支援事例
団体名:愛のまち合同会社
事業名:スーパー再建による持続可能な地域課題の解決
公益性評価のポイント:
地域の課題を的確にとらえ、今だけでなく将来の地域の不安も解消しようとする素晴らしい取り組みである。地元食材の調達など環境への貢献も期待されるとともに、地域の雇用創出など地域経済への貢献についても考慮されており、公益性の観点からも高く評価できる。

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全国的に有名になったのはこの仕組みを持っていたからかも・・

東近江市版ソーシャルインパクトボンド(SIB)
既存の行政の補助金等を成果報酬型に変えることにより、政策実現の可能性を高める。成果が評価されるまで、必要な資金を基金と協働で調達することにより、市民の応援団を増やす。補助金改革の一助とする。
公益財団法人・ 東近江三方よし基金

【基金の役割】
・中間支援組織として仕組みをコーディネートする。
・既存事業で対象となった事業体へ、外部からの資金調達を支援する。
・第三者評価委員会を設置し、成果指標の設定、成果評価を行う。
・評価結果を外部資金提供者および行政に報告する。
・成果を評価したのち、行政資金等を外部の資金提供者に利子付きで償還する。


あなたに採択が決まりましたよ
→ 成果目標を決める
その時に、応援してもらませんかと一口2万円で募集

そのオカネを原資に活動する
→ 結果を評価する。okであれば、行政に報告。予算化していたお金を出資をしていた人に返す。

2016年からやっている。メチャクチャ面倒くさい
メチャクチャ面倒くさい= いろんな人の手をお金がとおる
= 事業のことを知る。みんなで応援するようになる。
オカネを渡すだけでは、生まれなかった関係性がうまれる。

ポイントは、成果目標の設定!
・償還原資をだす行政は、税金をだすことのポイント
・活動する側が、社会課題に気づいて説明することが大事
※毎年、おざなりになっている「助成金の目的」が大事を再認識する。
行政の仕事は、領収書のチェックではないだろう。本当に成果が出ることに税金の使われていることが大事


インパクト評価が目的ではない!

しかし、なぜしないといけないと思っているか、
見える化すると共感がうまれる。
共感がうまれるということで、意識・行動が変わる

そうすれば社会が変わるのかがポイント!!
だから見える化(インパクト評価)する

※「量」の評価よりも「質」の評価!!
「量」の変化と「質」の変化に注目
→環境・経済・社会を客観的データで把握し、住民意識の変化を見える化することで社会的インパクトを発信する基金へ
→社会的インパクト投資の獲得へ

金融関係者は、とは言っても「リターン」やろと言われる。
金融関係者がインパクト投資と言っているが、ちゃうやろ!!
そんなこと(利益やろ)とばかり言っているから、世の中は行き詰っているんやろ!
こことは戦わないといけない!!

実は、昔からあることをやっているだけ

鎌倉時代からはじまる相互扶助の庶民金融
「多賀講」は、生命保険としての機能
「頼母子講」は、商売の資金調達の機能
「宗像定礼」は、健康保険としての機能
自然を第一原理としてとらえる認識論自然たる人間の内面は自然であるのみ自然は不変のエネルギーと運動によって成り立っている。

は生まれながらに道徳的なのではなく、他者のために行動するという実践によって道徳的価値の意識を獲得する。道徳的な実践を行う源は、人のエネルギーであり、社会的地位や富を持つ恵まれた人々だけにあるものではない。

テツオ・ナジタ「相互扶助の経済」より抜粋)

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質問

継続性について、やっている団体が、「これ絶対に続けないとアカンよな」とわかっているので、いろんな窓口を見つけて補助金をとれるようにしておくことが大事だと考えている。

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おまけトーク

野々村さん
「議員さんについて。「声を聞きたい」と来ると一回で終わる。「教えてーな」と来る人は何回も来るという気がする。

山口さん
共感のあとの行動を示していることがスゴイ

堀田さん
紹介しきれなかった事業で、子ども食堂、妊婦さん、うちの嫁が子供を産むときにそんな寂しい思い(孤独感を感じ取る)をしらんかった!
うちの町に子ども食堂を必要をしている人がいるの?ということを言う人がいる。
うちの地域でもやっている人がいて、頑張っている人がいて、オカネを出すことで応援できるが、野菜を持って行くことで応援も出来る。
知ることが、知らせることが大事

山口さん
SIBについて、いろんな人と成果が共有できるというのは、行政ではできなかった。
野々村さんの仕事も福祉の仕事だと言われがちだが、「お前そんなことまでしてたんか!?」という声が出て来る、めんどくさいけどSIBが大事。

野々村さん
いくらいんねん?と社長が行った。メンドクサイSIBなんかせんでも俺が出したる。ちゃうちゃう、SIBで、他の社長にも知って欲しいから、SIBを使ってくれという
山口さん、今日はシュッとしたはるけど、分配団体のときは・・・・ 私より福祉のことは何でも知ってる。地域をなめるように歩いてるでしょ?

山口さん
みんなから話をきいているだけ

堀田さん
議員の皆さんはよくわかていると思いますが、この人に言っても仕方がないという人には言わないですよね

野々村さん
制度は後からできている。だから役場に相談しても制度がないから無理と言われるが、ここ(二人、堀田さんと山口さん)に言えば、「やってええよ」と言ってくれる。

山口さん
昨日あった堀田さんの話で「現場に行ってますか?」ってあったと思います。それがまず基本。生の声に耳を傾けてくれる人がどれだけいるかが地域が重要。
役場の職員には話が響かないが、政治家には響く。片方には響くが片方には響くのは何だと思う。片方だけでは動かない。政治家はつなぐとか広げるとかできる役割だと思う。

野々村さん
私の本を買った時に意見が二つに分かれる。
「おもろい」という人と「意味がわからん」という人に分かれる。
現場の話をすると、山口さんも堀田さんも泣く。なんで?

山口さん
こんなことある?! という驚きかもしれない。号泣したという人がなんにもいるから皆さん気をつけて

堀田さん
日常は些細なことの積み重ねなのに、その小さな小さなズレが カチッとはまるところが泣けてくるのかな・・・レールの上に乗っていたいけど、ズレていることを見ていないことにしたい。
役場の方と政治家の話も、そうところかな、役場は計画にのっとっている、しかし今起きていることに対応したいけどとなっているのかもしれない。

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