2025.09.26 鈴木大裕さんに会いに高知県土佐町へ

三宅町で、「町で一つの小学校を建て替えるかも?」という話になり、
町としての小学校をどうするねん?!という話が出ています。

小学校の建て替えを機に、この町においての教育をどうする?という話が、議会内でも起こってきてました。
教育長からも「小学校を核としたまちづくり」という言葉が発せられています。
ということであれば、とりあえず、議会として「特別委員会を作ろう!」という話になりました。
さっそく、この6月議会で特別委員会を、議会として立ち上げています。

しかし、同時に、「政治は教育に介入してはダメなんじゃない?!」という意見も聞かれるようになります。

第二次世界大戦(大東亜戦争)当時、学校で「お国のために命をささげる」ことを、先生たちは、自分の教え子に言わざるをえなかった。そんな話を聞いたことがあります。
その反省にたって、教育が政治の片棒をかついではいけない。
教育は、国のためになされるのではなく、子どもたちのためになされるべきだ、と戦後に教育は変わった。
「政治は教育に介入してはならない」「教育に政治を介入させてはいけない」
そんなことが言われているはず。

三宅町議会としては、町で唯一の小学校の建て替えを機に、「学校を核とした“まちづくり”」を考えたい。
これは「教育に介入」か?
「議会側からの教育への介入」というのは、どこに境界線があるのか?
言われてみればよくわかりません。

ということで、特別委員会の委員長・渡辺議員が、「話を聞くならこの人はどうでしょうか?」と、
鈴木大裕(すずき だいゆう)さんを見つけてきてくれた。こんな流れから、鈴木さんに会いに行くことになりました。

〇鈴木大裕さんってどんな人?
ネット情報;
教育研究者/土佐町議員。
16歳で単身アメリカに留学。高校から大学院まで、計16年間アメリカで過ごす。
途中、通信教育で教員免許を取得し、千葉の公立中で6年半英語を教える。
2016年に家族で土佐町に移住し、2019年に初当選。
議員として活動しつつ、執筆や講演活動をしている。
著書に『崩壊する日本の公教育』(集英社、2024年)など。

高知県土佐町で「教育で町おこし」をするということで移住してきた、という話もどこかに書いてあったと思います。

行動力のあるな~16歳で単身留学って、すごいなぁ~というのが最初の印象です。
お会いする前に『崩壊する日本の公教育』も読ませてもらいました。

「学校教育ってどうやねん?」「学校の先生って大変ちゃうの?」と考えたりする人はぜひ読んで下さい。

この本を読んで、
鈴木大裕さんは、「ものすごく頭のいい人だわ、きっと」という感想と、
「生徒思いのメチャクチャいい先生だわ」という感想も持ちました。

〇実際に土佐町で鈴木大裕さんに合う

今回の研修で、鈴木大裕さんとお会いし、私の用意した話をする前に、なにかありますか?
ということになり、話題になったこと、その流れからの、大裕さんの話から、学んだことを一言でいうとすると、
「教育への政治介入とその境は、どこだ?」というようなことになるのではと思います。

大裕さんが言われていたのは、「やはり、教育への政治的な介入は避けるべき」しかし「その境界線は難しいかもしれない」

議会や議員として、教育について発言する時、その内容は教育への「内的な介入」なのか「外的な介入」なのか?
そんな言葉を使われていました。
「内的な介入」はダメだが、「外的な介入」は可能である。
そんなふうに話してくださったと記憶します。

例えば、「フィンランドへ視察に行く」と教育委員会が言ったときに、「フィンランドはダメだ。○○へ行くべき」というようなことは「内的な介入」となる。
しかし「予算が大きいからダメ」というような言い方であれば「外的な介入」になるので、議会としてチェックすべきだと思う。そんなことであったかと思います。

教育の内容に、議会・議員として「何が良い、ダメ」とは言えないが、「教育が行われている環境」に対しては言える。
すなわち、先生方の働く環境という点を問題にすれば、教育への「内的な介入」でなく「外的な介入」となり、積極的に、議員として問題提起してもよい。
先生方がたくさんの業務業を抱えないように、業務が増えたとしても時間内に終わらせられる程度に、環境がなっているべき、そんな主張だと思います。実際に、大裕さんは政治家として、先生の労働環境の改善に取り組んでおられ、そのことで、先生に時間の余裕ができ、心のゆとりになり、子どもたちへの先生の接し方そのものが改善することで、教育そのもののやりがいや、教師としての生きがいにつながって欲しい、と思われ活動されています。
ご自身の議員としての活動で、学校の先生がおかれている労働条件について質疑したり、常勤の美術の先生がいないという環境を指摘されています。
教育環境を改善すべく、町内のすべての先生に話を聞きに行ったとも言われました。

我々議員は、問題を指摘する学校や先生の敵ではなく、味方として先生方が子どもたちと接する環境を良くしたいと考えている。話を聞きたいと学校に出入りさせて欲しいということを、校長先生に頼んだと言われていました。
この活動を、県のレベルに広げるような動きもされています。

なんでもいいので、質問ありますか?というときに、気になったこととして下記のような指摘があります。
もし、三宅町町に複数の小学校が存在していて、一方だけに最新の教育(前日、イエナプランを取り入れている小学校を視察)を取り入れるとどうなると思いますか?と我々に問われました。
もし、一方の学校だけそんなふうにすると、町の中で格差が生まれます。一方は外から来た教育熱心な移住者の子どもが通う学校、もう一方の学校は地元の子どもが通う学校。そんなふうに同じ地域に住む子供が分断されます。
三宅町に小学校が一校しかないというのは恵まれています。
そこで熱心な教育をやれば、絶対に町おこしになります。そんなふうにも言ってくれていました。

あと、教育委員会の在り方についても話がありました。
戦前の反省で、政治が教育に介入してはいけないということは、教育の方針が歪められてはいけないということで、何かを決める時は、教育長が中心となって話し合って決めることになっている。そのシステムが教育委員会だ、ということ。
ですので、教育委員会は民主的に運営されているはずで、公開が原則、議事録もきっちり残さないといけない。
コロナ禍の時に、総理大臣の学校休校のお願いに対しても、「うちでは、どうする? コロナは今の所、出てないから、うちは今のところ休校にしなくても良いのでは?」というような議論が、本来はされないといけなかったのですが、実際はどうでしょう?という疑問を投げかけてくれていました。
実際には、そんな話し合いが教育委員会でなされずに、コロナで学校が休校になったんじゃないでしょうか?という、問題点を指摘されました。「全国規模で教育委員会が本来の機能を果たしていないのでは?」という恐ろしい指摘です。

鈴木大裕さん、話し方も穏やかで、イケメンで、すごく感じの良い方でした。
お会いするまでは、高知県の土佐町に移住してきた都会の議員さんということで、周りから浮いていたりしてないのかなぁ?と、意地悪な想像もしていたのです。
しかし、この人であれば、周りの人たちを信頼させていかれるだろうな、そんなふうに思える人物でした。

大裕さん、ありがとうございます!!

あ、そうそう、今回の大裕さんとの話の中で、教育の内容に介入したらダメという話で、教員免許も持たれているので、「自分の町の教育内容に対してどう思いますか?という我々の議員さんからの質問には「言いたいことや思っていることがたくさんある」と回答されていました。
「では、なぜ? 議員さんなの?」という質問が追って出てました。
我々の議会の議員さんで質問された方は、教育に関与したいということなのでしょうか。
その質問には、大裕さん「歯がゆいところがあります」というような回答をされていました。
教師として教育の内容に携わりたいという思いも強くもたれていることがわかります。
地元では英語を子どもたちに教えたりしているとのこと。
こんな先生になら英語を習いたい(自分が)、うちの子どもにも習いに行って欲しいと思いました。
「英語って面白いよ」とか「英語が好き」になるだろうな~と想像がつきます。

お話を聴いて改めて、大裕さんの著作『崩壊する日本の公教育』を読むと、制度をどうしたらいいのか、制度に問題がないのかという視点で、教育について書かれていることがわかります。
これは、教師の立場というより、議員という(制度を変えられる)立場からの内容の書籍です。

「先生が先生らしく、生きがいを持って教えられる環境を整えるための制度(環境)を目指すために書かれた書籍」という位置づけが、正しいこの書籍の評価ではないでしょうか。
「制度が悪いと、現場の先生がいくら頑張っても、良い教育がしにくい」あるいは「制度でカバーできる部分は制度を見直すべきで、現場が疲労せず教育にあたれる環境を作る」という政治家の立場で書かれている書籍です。

つまり、私の初めに本を読んで得た印象の「きっと、いい先生だわ」という感想は、間違ってはいませんが、
正確には「いい政治家」だわ!です。
「いい教師が生まれるために必要な制度(環境整備)を考えている人物」というのが正しい感想だとなります。
教育に関心をもつ議員さんは必読の書籍です。

イエナプランの実践校・常石ともに学園の校長先生が言っていました。
先生たちは、「ツラ、楽しい」って言います。
この「ツライ」の部分をできるだけ小さくして、「楽しい」の部分を出来るだけ大きく!
制度や教育の環境を整えることで実現可能なのであれば、それが我々議員の役割です。

この二日間で得た知見を我が町にも活かしてゆきます。

2 thoughts on “2025.09.26 鈴木大裕さんに会いに高知県土佐町へ

  1. 追記
    「教育に政治は介入してはいけない」では、政治の介入なしに、どうやって町の教育を民主的に、一人の独裁者が支配しないように構築していくのか…という課題には、教育委員会があるといいます。
    つまり教育委員会は、教育の方針なりを、民主的に決めて行かねばなりません。
    そのために各自治体には、教育委員会が設置されています。
    三宅町教育委員会;
    そして、そこでの会議は原則オープン(教育委員会会議規則が定められています)
    https://www1.g-reiki.net/town.miyake/reiki_honbun/k420RG00000144.html
    オープンなので傍聴規則も定められています。
    https://www1.g-reiki.net/town.miyake/reiki_honbun/k420RG00000383.html

    まさに、議会のような仕組みが作られています。
    議員は選挙で選ばれますが、教育委員さんは任命制になっている、という点が大きく違う点のようです。

    ★関係の要点(箇条書き)
    県 ↔ 町教委:上下関係ではなく、県教委は**「指導・助言・援助」(地教行法26条)**。教員の採用・配置・研修は県が実務主導(県費負担教職員制度)。

    議会 ↔ 町長:町長が予算・条例を提案、議会が議決・監視。
    町長 → 教育長:町長が教育長を任命(議会同意)。
    町教委 → 教育長 → 学校:町教委が方針決定、教育長が執行統括、校長が校務の最高責任者として現場を運営。
    学校 → 町教委:学校は教育活動の実施と報告。
    町教委 ↔ 議会:町教委は報告・答弁責任、議会は監視・評価。

  2. さらに追記:

    教育委員の人数およびその根拠は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(略称:地教行法)第3条および第4条に明確に規定されています。以下に条文を引用して整理します。
    法的根拠
    【地教行法 第3条】(教育委員会の設置)
    都道府県及び市町村に、教育、学術及び文化に関する事務を管理し及び執行するため、教育委員会を置く。
    ➡ 教育委員会の設置義務を定めた条文です。
    次の第4条でその構成が定められています。
    【地教行法 第4条】(教育委員会の組織)
    1 教育委員会は、教育長及び4人以内の委員をもって組織する。
    2 教育長は、教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表する。
    3 委員は非常勤とする。
    4 委員の任期は4年とする。
    5 委員は、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関して識見を有する者のうちから、議会の同意を得て、長(都道府県知事・市町村長)が任命する。

    解説
    この条文により、次のように整理できます。
    区分|人数・地位|法的根拠|備考
    教育長|1人(常勤)|第4条第1項・第2項|教育委員会の代表・会務総理者
    教育委員|4人以内(非常勤)|第4条第1項・第3項|合議体としての意思決定を担う
    合計 教育長を含めて最大5人|―|最小3人でも構成可能(条例で定める)

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