空家問題

「地方議会人 2018.10月号」より引用

国の空家に対する取り組み
1.空家の除却について
2.使える空家の再利用

1.指導、勧告、命令、代執行を行うことのできる空家管理条例の制定。
2014.11 空家対策特措法(2015.5/26全面施行)
イ)倒壊など保安上危険 ロ)衛生上有害 ハ)景観を損なうなどの状態が著しくなっているものを「特定空家」と認定し、助言・指導、勧告、命令、代執行の措置を行えるものとした。
また、従来、代行執行できなかった所有者が確知できないケースも代執行出来るようになった(略式代執行)
さらに所有者を特定する際、従来は目的外使用でダメだった固有資産税の課税情報を利用できるようにした。
同時に、215年度の税制改正では、勧告の対象となったものについては固定資産税の住宅用地特例を解除することとした。
(森内注記:空き家対策として、助言・指導して、回答がなければ勧告すれば、住宅用地特例の税の軽減措置を受けられない。空家をそのままほったらかしにするのは、更地にすると税金が高くなるからとよく聞くが
そうすることのメリットを無くした、ということ。しかし、行政から何か言ってくるまで放っておかれる可能性は残る。)

特定空家の所有者の税負担を高めたとしても、支払い能力がなく、除去費も出せない場合には、そのまま放置される物件も出てくると考えられる。この場合、最終的には代執行に至るが、費用は請求しても払ってもらえず、費用回収のために敷地の売却を迫られる。しかし売れたとしても抵当権がついていた場合、自治体に回ってくる分があるかはわからない。
代執行に積極的に踏み切る弊害としては、最終的にこうした措置が取られることが分かっているとしたら自ら動かず、自治体による措置がとられることに任せる所有者が出てくることである。

対策例

  • 広島県呉市:1件当たり上限30万円の除去補助で、501件総額1億4243万円を補助(2016年度までに)代執行するよりずっとまし。
  • 長崎市など:土地建物をしに寄付する条件で、空き家の公費による除去を進める
  • 福井県越前町など:空き家の建っていた土地を一定期間公共利用することを条件に除去費を補助し、公共利用の期間の固定資産税を免除する仕組みを設ける
  • ただし、最初から支援を受けられるとわかっていたら、誰も自己負担で除去しなくなる。自治体としてはあくまでも自主的除却を原則とし、公費投入に踏み切る場合は、地域にとって有効な手法を選ぶ必要がある。

    空家を地域のコミュニティスペースとして改修して利用するケースも多いが、こうしたスペースの需要は限られ、活用策としては限定的にならざるを得ない。本来は、いったん建てられた住宅は、子供などが引き継がない場合は、中古住宅として再利用されることが望ましい。⇒ 循環型の住宅市場へ


    相続放棄の問題などもあり、最終的には、人口減少下で今後も居住地として存続させるエリアについて、居住環境を維持するため、所有者による自主的対応が期待できない特定空家を、どれだけ公費投入して除却してゆくかという問題に発展してゆく。

    空家バンクについて
    空家バンクを設置しても開店休業状態になっているものが多い。

    実績を上げている空家バンクの特徴

  • 不動産業者やNPO、地域の協力員などと連携して、積極的に物件情報を収集している。
  • 問い合わせがあった場合、物件案内はもちろん、生活面や仕事面など様々な相談に応じたり、先に移住した人と引き合わせるなどきめの細かい対応
  • 自治体職員だけでは対応しきれない。
    空家バンクの成約件数が最も多いのは、長野県佐久市。2008年度から400件以上の成約。


    循環型の住宅市場へ
    千葉県流山市の例:
    市が公表する支援チーム(不動産業者、設計業者、建設業者で一つのチームを組織し、市に登録)に、売却希望者、購入希望者がワンストップで相談できる体制を整えた。
    この仕組みは、市が窓口となることで、ビジネスを支援するものであり、空家バンクとは異なる。都市型の流通促進策?


    空家法に基づく空家等対策計画を策定した自治体を例にみると、全域で同じ対策を講じる例が多いが、
    埼玉県毛呂山町の例のように、
    居住地として残す地域を選別しつつ、優先順位をつけて、除却、利活用を進めてゆくという対応が迫られる必要性があると考えられる。



    高知県木へんに寿町の空家改修促進事業
    空家所有者から庁が十年間(今は十二年間)の契約で借り上げ、トイレ、ふろ、台所といった水回りを中心に改修を行う。
    改修には国の補助半分、県の補助25パーセント、残りの25%を町の事業として行う。
    入居者の月1.5万円の家賃で回収するため、実質的には町の負担はなし。