「質問力」でつくる政策議会

「質問力」でつくる政策議会 / 龍谷大学政策学部教授 土山希美枝

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政府政策が「その地域に住む人々にとって必要不可欠な〈政策・制度〉であり、首長と議会の役割は、これを整備し、より「よく」することだと整理してきましたが、これには二つの「正解がない問い」があります。
1、何が「必要不可欠」なのか
2、課題解決のためにどの政策を用いるのか

です。実はこれは、政策の特性そのものです。

1について。人々の暮らしが政策課題の現場。暮らしの課題は無限です。課題は無限ですが、資源は有限です。
そのため有限な資源を有効に分配するのかについて、市民同士でも利害は対立します。正解はありません。
2、政策は「現在の課題状況」が「未来のある時点でめざす状態になっている」ために設定する目標と手段の組み合わせです。言い換えれば「未来を〈制御〉する手段」でもあります。
その政策が成功するかどうかは「現在」では誰も保証できません。動員する資源の量、資源をどう使うのかという発想、その組み合わせは多様にあります。しかしどの政策が正しいのかは「現在」ではやはりわかりません。

「正解」がないからと課題を放っておいては悪くなるばかりです。「正解」はわかりませんが、「自分たちなりの答え」でもって課題に取り組まねばなりません。それを作るのが「議論による決断」なのです。

〈政策・制度〉という軸から自治体という機構をながめるとき、「議論による決断」をになう機構としての議会の重要性が本来、いかに大きいか・・・
1、2について、代議制民主主義の制度として、執行機関は決める権限を持たず、提案する立場にとどまります。
しかし、議員がいま1、2を、つまり、自治体の< 政策・制度>のありかたを実質< 制御>していると言えるでしょうか?


繰り返しになりますが、
議会は、自治体の政府政策のありかた、つまり「必要不可欠な< 政策・制度>がなにか」、「それぞれの課題に効果のある< 政策・制度>はどれか」ということについて、を議論して決断することを市民から託された存在であり、自治体の< 政策・制度>が市民にとってよりよいものとなるよう< 制御>する責任をもつ政策主体だということです。
このような議会の在り方を「政策議会」と呼びたいと思います。


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議会の責務は、そこで生まれる課題をとらえながら、既存の、執行機関により執行されている< 政策・制度>の在り方を問いかけ、議論し、意思決定することにより、< 政策・制度>が、そこに暮らす人々にとってより良いものとなるよう< 制御>することです。

後段の「< 政策・制度>が、そこに暮らす人々にとってより良いものとなるよう< 制御>すること」は、議会と執行機関の共同責任。
前段は、後段のための「議会の本領」です。議会の持つ価値は「議論して決める」機関だということです。
議会にとって、自治体の< 政策・制度>にかかわる「争点」こそ自身の存在意義であるわけです。