「会議を制する心理学」 岡本浩一 中公新書ラクレ

会議だなんだと行われるのですが、
「時間の無駄だ!」と怒りを覚えたために読んだ本ではありません。
(その時は、会議のやり方を書いた本を読みました)

これは、会議での意思決定に疑問が出てきたので、手に取った本です。

いい本です。
自分のメモのために抜粋しておきます。

日本的会議の特徴(筆者は、悪いとは言っていません。会議のクセを知るべしとして、まとめています)
1. 評決忌避
(全会一致が美という価値観がある)

2. 無言の強要、反論を許さない
(発言という行為そのものを可決に対する問題行動だとみなす空気がある)
(重要な指摘であっても、議案への反対意見の表明が、全体への非協力とみなされる風潮がある)

3. 無用の長広舌(ちょうこうぜつ)
※森内追加記載
「この本では誰かが無用の長い話をして、大事な議案を、反対する人から遠ざけて強引に可決する傾向があるように説明しています。
しかし、森内は
「本質からはずれたどうでもいい質問や話を長々としたり、やり取りが続いている中に、口をはさんできて脱線させ、話が長くなり、論点がずれていくような場面が浮かびました。
『会議で意見を出し合っているという意識が薄い』『参加しているメンバーの言い分を聞いていない。他の参加者の意見を聞いて自分の考えを変える気がない』というふうに個人的には理解しましたが、私の体験している会議だけの話で、日本的なのかどうかはわかりません」

4. 記名投票
部署や分掌による意見や利害関係の葛藤が大きいと予想される票決は、本来、無記名投票するべきものですが、そうなっていない。
職業的良心に従って上層部の提案に反対したことで将来の人事評価が損なわれるかもしれない、という懸念が低い状態で票決が行われることが望ましい。
しかし、日本の多くの組織はこの点についての問題意識がとても低い。挙手による投票は記名投票です。

5. 根回し
これは日本の意思決定文化の特徴的な一部です。それだけにリスクを明瞭に認識しておくべきです。
最大の問題点は、『根回しで行われた原案についての説明と、議長での正式の説明が細部まで同一とは限らない」ことです
そういう場合にすぐ「事前の説明と異なる」と指摘して内諾を撤回できる人はマレ。そのまま内諾を維持することがよくある。
このような「説明の温度差」は、しばしば意図的になされます。
本会議で、「根回しの時の説明と異なる」などと思えば、ひっくり返す心づもりでいるべき。
本来、正規の会議での自由な議論を阻害するような根回しは自粛するべきです。

6. 因習主義(前例主義)
「前例がない」ことだけを理由に却下していたら、その組織に進歩はありません。
意思決定の風土として「前例があるかないか」を重視され続けている組織では、提案の本質的な部分を吟味することが少なくなる。

7. 手続きの軽視
欧米では、手続きに瑕疵がある意思決定は無効というのが原則
懲戒を決定する会議では、人名は抜きで事柄だけを議論しなければならない

以上のような日本の会議の特徴は、大会議 ― 小会議という「二段階会議」によって、さらに強固なものになりがち。
二段階会議の特徴
・大会議は、合意を確認するための儀式と理解されている
そこでは内容に踏み込む論戦を行うことは了承されていない(しかし禁止もされていない)


◎二段階会議の問題(P51)
大会議 ― 小会議という二段階会議(あるいは多段階会議)には次のような特徴がある。
多くの組織では、いきなり経営陣が意思決定をするのではなく、下の部署で議論を積み上げ、それを踏まえて結論を出すのが普通。
(先の日本の会議の特徴はこれによってさらに強いものになりがち。)
特徴
1. 大会議は合意を確認するための儀式として理解されていることが多い。
そこで内容に踏み込む論戦を行うことは了承されていない(しかし禁止もされていない)

2. 実質の検討は、下位の部署で行われている。しかしそこでの意思決定は、会議か懇談かもはっきりしない性質のものであることが多く、議事規則も可決基準(過半数か全員一致か)もはっきりしていない。

これらの傾向により大会議と小会議はそれぞれに次のような問題をかかえることになる

〇大会議の問題
・議題が可決を前提として提案されているため、反対意見は歓迎されず「不規則発言」とみなされる
・議題が多いために、一つの議題に十分な時間を割くことができない。時間がかけられないので、込み入った質問や反対意見を述べることが歓迎されず、発言する側に躊躇が生じる。
・小会議などで充分な検討がなされたとの前提で議案が出ており、その意味でも質問が抑制される。
・質問が禁じられているわけではないため、この会議で了承されたということは、自由な討議の末の結論ということになり、権威づけられる。
・投票の可決基準が定められていないことが多く、全会一致とみなされやすい。