「墓じまい」自分の代で 少子高齢で維持困難、無縁墓も増加

管理者が絶え、荒れ放題になった墓=神戸市北区、鵯越墓園(画像を一部加工しています)
拡大
管理者が絶え、荒れ放題になった墓=神戸市北区、鵯越墓園(画像を一部加工しています)
墓じまいの法要の様子=2014年10月、神戸市須磨区(井上元子さん提供)
拡大
墓じまいの法要の様子=2014年10月、神戸市須磨区(井上元子さん提供)
「墓じまい」の大まかな流れ
拡大
「墓じまい」の大まかな流れ

 少子高齢化による後継者の不在などで、墓を撤去し、寺などに遺骨の管理を任せる永代供養に切り替える動きが広がっている。「閉眼」「お性根(しょうね)抜き」などの法要から撤去までを総称する「墓じまい」という言葉も浸透。時代の流れと言えるが、「墓の文化が廃れていくのは寂しい」との声も聞こえる。(黒川裕生)

神戸市兵庫区の井上元子さん(71)は昨年10月、両親と父方の祖父母、2人の兄が眠る同市須磨区の墓を処分した。立つのは長い階段のある傾斜地。年を重ねるごとに「しんどい」「来られるのはこれで最後かも」と思い悩んだ末の決断だった。

夫の幸一(ゆきかず)さん(77)との間には一人娘がいるが、とうに嫁いで墓を継ぐ人はいない。元子さんは姉(75)と相談して、元気なうちに墓じまいすることを決意。同区にある菩提(ぼだい)寺の住職に墓前で読経してもらい、同寺の納骨堂に遺骨を納めた。墓の撤去も含め約20万円かかった。

「昔は墓がないと恥ずかしいと思われたが、魂を大切にしていれば形にこだわる必要はない。肩の荷が下りました」

「閉眼法要は、ここ4~5年で目に見えて増えてきた」と語るのは、7年前に納骨堂を設けた瑞龍寺(同市兵庫区)の矢坂誠徳(せいとく)住職(63)。2012年に10件余りだったが翌13年には30件を超え、14年も40件以上。「子や孫に墓の管理を任せるのは申し訳ない」「遠方で墓参りが難しい」などの理由で処分する人が多いという。

一方で管理費などが要らない納骨堂の人気は高く、約千のうちすでに約800が埋まった。「墓の時代は終わったとすら感じる」

市営の鵯越墓園(同市北区)などに約8万区画を備える神戸市によると、墓じまいして区画が市に返還される数は10年度の275件から微増傾向が続き、14年度は324件。同時に急増しているのが、管理者の死亡などで使用料が払われない「無縁墓」だ。立て札などで親族に連絡を呼び掛けるが反応は鈍く、雑木が生い茂るなど荒れ放題になった区画が点在する。同市斎園管理課は「中途半端に残されるのが一番困る」とこぼす。

墓石の処分を担うのは石材店。新たな商機と見て広告で打ち出す店もあるが、中野石材(同市須磨区)の中野隆司社長(71)は「心を込めて作った墓石をつぶすのは商売抜きで悲しい」と漏らす。維持できない事情に理解を示しつつ、「先祖供養が死語にならないよう願うばかり」と話す。