少子化対策(島根・津和野町が人口減少対策

25年住めば家プレゼント 島根・津和野町が人口減少対策

 格安家賃の新築一戸建てに25年住んだら敷地ごとその家をプレゼント-。島根県津和野町による移住者受け入れ事業が注目を浴びている。完成した5棟はすべて子どものいる世帯の入居が決まり、2018年度までに20棟の追加整備を予定。人口減少対策の決め手となるか、町の期待も高まっている。
 「家賃は月3万円。譲り受けるまでの25年間は家の修繕も町がしてくれる」。4月に東京都板橋区から妻の美保さん(40)、小6の長男、小4の長女、保育園児の次女と一緒に家族5人で移住した原田秀明さん(34)はスギ材がふんだんに使われたリビングで笑顔を見せた。
 窓越しに広がる山林の眺望に「釣りや山菜採りができる所がいっぱい。自然体験を通じて子どもたちが気持ちも体も豊かに育ってほしい」と美保さん。
 原田さん一家が入居したのは町が総額1億5千万円をかけて完成させた5棟の一つ。1棟当たりの敷地は約400平方メートルで、延べ床面積95平方メートルの木造平屋だ。原田さんの家は地元のスギ材を使い、屋根は光沢のある赤茶色が特徴の県西部特産の石州瓦を使っている。
 「人口減少対策の目玉」と期待する町は移住者の希望に応じて仕事の紹介もする。林業に関心があった原田さんは4月から、町が募集していた林業を担う地域おこし協力隊として働き始めた。
 町が昨年11月に小学生以下の子どもがいる40歳以下の世帯を対象に入居者を募集し、17世帯から応募があった。町と地区の住民が地域活動に取り組む意欲などを審査し、原田さんはじめ、兵庫県明石市、隣接する島根県益田市の3世帯の計5世帯が決まった。
 事業のきっかけは人口の急減。国勢調査によると、05年の9515人が5年間で11・4%も減り、8427人になった。参考にしたのは県内の美郷、飯南両町で進む同様の事業。07年度から取り組む美郷町では移住者向けの37棟は現在満室で「子どもの声が増えて地域が明るくなった」(町担当者)という。
 津和野町の赤松朱美課長補佐は「思い切ったことをしないと若い人に住んでもらえないと危機感があった。地元のいろいろな方と交流してもらって、地域活性化の一翼を担ってもらいたい」と話している。