毎日新聞 2023.07.23 知事、三宅町民に説明 大学新設見直し 困惑の声相次ぐ /奈良

大学の建設計画を中止した経緯について説明する山下真知事=三宅町で2023年7月20日午後6時33分、吉川雄飛撮影拡大
大学の建設計画を中止した経緯について説明する山下真知事=三宅町で2023年7月20日午後6時33分、吉川雄飛撮影

県の事業見直しに伴い県立工科大(仮称)の建設計画が中止となった三宅町で20日夜、住民説明会が開かれた。出席した山下真知事は計画の見直しに理解を求めたが、大学ができることを前提に所有地を売った地権者からは怒りや困惑の声が相次いだ。

県立工科大は、磯城郡3町で県が進める都市整備計画「大和平野中央田園都市構想」の中核施設に位置付けられていた。しかし、山下知事は少子化が進む中で県が新たな大学を設置する必要性は薄いと判断。他町で予定されていた球技専用スタジアムなどの建設も含め、構想全体を見直す考えを表明している。

 説明会は町の要望に応じて県が開催し、地権者や地元住民ら約50人が参加した。山下知事は「地域を発展させる方法は大学の設置だけではない」と語り、若者の県外流出を防ぐために企業誘致に重点を置く考えを示した。

これに対し参加者からは「大学ができると聞いて先祖代々の土地を手放したのに、詐欺にでもあった気分だ」などと、知事の判断への不満が相次いだ。地権者の松村亨さん(76)は「大学新設計画を潰すことを前提にした話ばかりで、がっかりした。若い人を町に呼び込むには大学を造るのが一番だ」と訴えた。

 説明会後、山下知事は取材に「地域の発展を願う地元の方の思いを感じた」と述べる一方、大学は造らないと改めて強調。「新たな構想案ができ次第、地元に提示する。その段階で再び議論したい」と話した。【吉川雄飛】