『悪の民主主義 民主主義原論』 小室直樹

多数決で決まる結果が必ず正しいと思うことが少なくなってきた。
民主主義と多数決の関係などを考えるきっかけになればと読んでいます。実は何度か読んでいます。
小室直樹氏の書籍は、どれも考えるきっかけになります。

印象に残ったフレーズを書きあげておきます

本書の目的は、民主主義、すなわちデモクラシーを本当に理解することにある。なぜか。現代日本に深く根をおろす禍根は、すべて戦後日本の民主主義(デモクラシー)と言われるものにあるからである。
頻出する諸不祥事、教育の荒廃、社会の混乱・・・の由来も、実はすべてここにある。

強制された民主主義ということ自体、矛盾の最大のものである。
欧米諸国ではよく知られているように、それらの言葉(民主主義、自由、平等、人権、議会)の意味が理解されることが、民主主義存立の条件なのである。

例えば、
「平等」の誤解は、「どの生徒にも同じことをさせる」という結果を生み、受験戦争を最終戦争にした。知的エリートを根絶させ、優者の責任(ノーブレスオブリッジ)を埋没させて無責任体制を完成させた。
「自由」の誤解は、権威と規範を失わせ、若者を本能のままに放置する放埓となった。
「人権」の誤解が、殺人少年をのさばらせている。
「議会」の誤解が、政治家を役人の傀儡にしている。

「民主主義」は、プラトン、アリストテレスの昔からずっとマイナスのイメージであった。それがウィルソン米大統領による第一次世界大戦における対独宣誓布告文にある「この世界をしてデモクラシーが住みよい所にする」からプラスのイメージに転じた。