米国でPFAS訴訟拡大、3Mは和解に1.8兆円 規制強化背景

米国でPFAS訴訟拡大、3Mは和解に1.8兆円 規制強化背景
2023年6月27日 4:56 (2023年6月27日 8:43更新) [会員限定記事]

3MはPFAS汚染の責任を問う多数の訴訟を抱える=ロイター

【ニューヨーク=西邨紘子】有害性が指摘される化合物「PFAS(ピーファス)」をめぐり、米国で企業の責任を問う訴訟が相次いでいる。工業製品大手スリーエム(3M)はこのほど巨額の和解金支払いで合意したが、収束する兆しはない。バイデン政権はPFAS規制を強めており、汚染物質の除去などの巨額負担を求め企業が訴えられるケースが広がる。

3Mは6月22日、最大125億ドル(約1兆8000億円)の和解金支払いで地方政府などと暫定合意した。2016年に排ガス不正問題を巡り独フォルクスワーゲンが合意した米当局への支払額(147億ドル)に次ぐ規模だ。6月初旬には米デュポンなど化学3社も12億ドル近い和解金支払いで合意していた。

3M、デュポンとも和解金はPFASが検出された地域の公共水道システムで、含有量の調査や除去設備の導入費用などに使われることになる。

PFASは4700種を超える有機フッ素化合物の総称。数千年にわたり分解されないため「永遠の化学物質」とも呼ばれる。水や油をはじき、熱に強いなどの便利な性質から、消防署で使う消火剤や、フライパンの焦げ付き防止加工まで、幅広い産業品や日用品に使われてきた。

PFASメーカーは長年にわたり、健康や環境への悪影響を否定してきた。3Mは今回の和解でも、汚染の責任を認めていない。だが、近年の研究でPFASの発がん性や免疫力低下への関連など、健康への悪影響が明るみに出た。米当局は22年、最新の調査分析の結果、一部のPFASが従来考えられていたよりも少量で「健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘した。

欧州連合(EU)は幅広い種類のPFASについて製造や輸入を規制する検討に入った。PFAS対策を公約に掲げて当選したバイデン米大統領も、21年の政権発足後から規制強化を進める。

米環境保護局(EPA)は21年10月、飲み水や産業製品、食品などに含まれるPFAS量の調査や、飲料水の安全基準引き上げなど、3年かけて規制を強めるロードマップを公表した。毒性が強い6種類のPFASは有害物質に指定し、公共水道システムの運営元に安全基準値のモニタリングと管理義務付けを目指す。その他にも、数十種類のPFASを飲料水の水質定期検査の対象に加える計画だ。

非営利の米環境保護団体、環境ワーキンググループがEPAの水質検査データなどを基にまとめたところ、22年6月の時点で米国50州3000カ所近くの飲料水でPFASが安全基準を超えていた。検出されたPFASには特に毒性の強い種類も含まれた。PFASの除去は難しく、コストも高い。ミネソタ州は汚染水からPFAS除去・処理する費用が、PFAS1ポンド(約454グラム)あたり270万〜1800万ドルかかると試算する。

これまでのPFAS汚染に関する訴訟は、工場からの排水などメーカーが汚染に直接関係する例が中心だった。だが、3Mが暫定和解した訴訟では、消防署が訓練に使った消火剤に含まれていたPFASによる間接的な水質汚染への責任が焦点となっていた。健康懸念の深刻化と対応費用の拡大に直面する行政側が、より幅広い種類の汚染問題の責任を企業に問い始めている。

PFAS関連訴訟に詳しい法律事務所CMBG3のジョン・ガルデラ弁護士は「検査の精度向上と安全基準の引き上げにより、今後は個人が健康被害を訴える例や、PFASを使用する川下製品を作る企業の責任を問う訴訟などが増える可能性がある」と指摘した。

規制強化の流れを受けて、企業も対策を急ぐ。3Mは22年12月、25年末をめどにPFASの生産や使用を全廃すると発表した。米マクドナルドなどは25年までに食品や調理関連商品の包装・容器をPFAS不使用品に切り替える方針を発表した。