リスク・コミュニケーションとクライシス・コミュニケーション

【引用:https://jxpress.net/risk-communication/】

リスクコミュニケーションの理念は慶應義塾大学の吉川肇子教授が1987年に発表された社会心理学者のスターレンとコポックによる「リスクコミュニケーションの送り手の4つの義務」を紹介しています。

リスクコミュニケーション

  1. 【実用的義務】
    危険に直面している人々は、害を避けられるように、情報を与えなければならない。
  2. 【道徳的義務】
    市民は選択を行うことができるように、情報に対しての権利を持つ。
  3. 【心理的義務】
    人々は情報を求めている。また、恐怖に対処したり、欲求を達成したり、自らの運命をコントロールするのに必要な知識を否定するのは不合理なことである。
  4. 【制度的義務】
    人々は、政府が産業リスクやその他のリスクを効果的かつ効率的な方法で規制することを期待している。また、この責任が適正に果たされていることの情報を受けることも期待している。

企業などの送り手側がリスクを曖昧に伝えたり、リスクをステークホルダーに対して隠したりするなどリスクコミュニケーションの送り手の4つの義務のいずれかが果たされないと適切なリスクコミュニケーションにはなりません。
その場合は万が一リスクが発生した際に企業のイメージダウンに繋がりかねないので、注意しましょう。

クライシス・コミュニケーションとの違い

クライシス・コミュニケーションとは、災害や事故などのリスク発生時に被害を最小限に抑えるために情報開示を行うコミュニケーションのことで、不祥事などが発生した際に企業が行う謝罪会見をイメージすると分かりやすいでしょう。
対象となるのは消費者・地域住民、メディアなどのステークホルダーでクライシス・コミュニケーションでは正確な情報を迅速に開示することが重要です。
クライシス・コミュニケーションの事例としては以下の雪印牛肉偽装事件があげられます。
2001年に農林水産省が国産牛肉に牛海綿状脳症(狂犬病)に感染したものがあると発表。
農林水産省は対策の1つとして流通させないように国産牛肉買取制度を始めましたが、雪印食品ミートセンターのスタッフが国産牛肉よりも価格の安い外国産牛肉を国産牛肉と偽り、買取費用を不正に請求し続けていました。
2002年にこの補助金詐欺が発覚し、雪印食品の吉田升三社長(当時)は記者会見で、本社の関与を否定しました。
しかし後に本社の関与の隠蔽や経営の建て直しを優先するために約1,000名のパート・アルバイト従業員を一方的に解雇したことなどが発覚。
これらの要因が重なって雪印食品は大幅にイメージダウンし、その後、廃業となりました。

上記の事例のようにクライシス・コミュニケーションで失言や誤り、初動の遅れなどがあれば企業のイメージダウンに繋がり、企業のその後の存続に関わりかねません。
そのため、適切なクライシス・コミュニケーションを行いましょう。

リスクコミュニケーションとクライシス・コミュニケーションの違いは、リスクコミュニケーションがリスク発生前に起こる可能性のあるリスクをステークホルダーと共有し意見交換を行いますが、クライシス・コミュニケーションは実際にリスクが発生してからリスクに関する情報開示を行います。

テロ対策は、クライシス・コミュニケーション。
情報をコントロールすることが基本。民主主義と折り合いが悪い。

新型コロナ対策に関する情報は、これだけ広がっているので、リスク・コミュニケーションをとらないといけない。