自治体職員が知っておくべき新地方公会計の基礎知識

『自治体職員が知っておくべき新地方公会計の基礎知識 ~財政マネジメントで人口減少時代を生き抜くために』
元・習志野市会計管理者、地方監査会計技術者 宮澤正康 氏

なぜ自治体に公会計を導入したのか。
背景:
夕張市の破綻
不適切な処理(毎月の収入が20万円しかないのに21万円を支出し続けた。最初の月は1万円不足しそれを借りる。その月は実質の収入は19万円。翌月も21万円の支出をすると2万円の不足。これを一般会計と他会計の間で繰り返した)
具体的には、一般会計から他会計に不足分を貸付する。出納整理期間(4-5月)に他会計から一般会計に償還する。
次年度の一般会計の予算で他会計に不足分を貸付する。ということを繰り返した。
この不適切な処理をチェックできなかった議会にも厳しい目が向けられた。

公会計(複式簿記)の会計に対してあまり実益がないという意見
・財産、物品、金銭の各会計が遊離している点は、予算決算の付属書類として、物の状況を報告すれば足りる。
・複式簿記に習熟しない職員の教育は簡単にはいかない。一般大衆にとって公会計集の複式簿記がわかるかどうか疑わしい。
・国と公共企業体との間に起きているように二重帳簿になる可能性がある。
・現在の制度に比べて、そう実益があるとは思われない。
・会計理論に過ぎない。

法制化できなかったが、「大臣通知」が出され公会計改革を勧めるという総務省の強い意志がある。

【地方公会計】⇔【企業会計】
貸借対照表 ⇔ 貸借対照表
【基準日における財政状態(資産・負債・純資産の残高および内訳を表示したもの)】

行政コスト計算書 ⇔ 損益計算書
【一会計期間中の費用・収益の取引高を表示したもの】

純資産変動計算書 ⇔ 株式資本等変動計算書
【一会計期間中の純資産およびその内部構成の変動を表示したもの】

資金収支計算書 ⇔ キャッシュフロー計算書
【一会計期間中の現金の受け払い3つの区分で表示したもの】


首長が議会に提出しなければならない決算書類(法第233条第5項、施行令第166条第2項)
・「歳入歳出決算書」
(款[かん]、項[こう]に対する決算、金額の単位は1円単位)

・「歳入歳出決算事項別明細書」
((款[かん]、項[こう]の金額の内訳を明らかにし説明したもの)

・「実質収支に関する調書」
(単年度の黒字額、赤字額を示したもの)

・「財産に関する調書(財産表)」
(決算書で金額の収支状況はわかるが、財産の状況はわからないので、それを別に示したもの。土地や建物など公有財産などの状況がわかる)
※役場のサイトにはこの資料は無いようです。総務省のホームページに全国の自治体の決算カードが掲載されておりダウンロードできます。

・「監査委員の審査・意見書」
(監査委員が法令や規則などに違反していないかを検討して意見書を作成します)

・「主要な施策の成果を説明する資料」
(法による様式はないので各自治体により異なる)

・健全化判断比率審査意見書および資金不足比率審査意見書」(財政健全化法 第3条第1項および同法第22条第1項)
(4つの財政指標「実質赤字比率」「連結実質赤字比率」「実質公債費比率」「将来負担比率」)


議会に提出される決算書類を読み込むことは必要ですがかなりボリュームがあり、どこから手をつけていいのかわからない新人議員さんもいるかと思います。
そこで自治体の全体像を把握するのに「決算カード」を利用する方法をおすすめしたいと思います(p96)
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/card.html