あらためて「補正予算」とは

あらためて「補正予算」とは

一般の人は普通は読まないはずですので、
「私が読まなくて誰が読む!」という変な使命感から、『議員必携(第12次改訂新版)全国町村議会議長会[編]』を紹介します(読みます)

議員必携

248ページ「予算の補正」より抜粋

2 予算の補正
 地方公共団体の予算は、年度の収入、支出の一切を見積もって計上した歳入歳出予算と、将来の財政支出にかかる取り決めを併せて通年予算として編成するのが原別である。
 しかし、当初予算確定後のいろいろな政治・経済・社会情勢の変化によって既定の予算に追加し、あるいは変更を加える必要が生じる。このような場合に編成する予算が「補正予算」である。
 それは、一般的に、当初予算の編成時、予期できなかった制度の改正、事情の変更や公共事業費の配分決定によるものが多い。これを例示すると、
(1)天災や災害の発生によって必要となった予算措置をするためのもの
(2)国、県の補助金・負担金・交付金等の確定によるもの
(3)地方債の同意の見通しが確実となったことによるもの
(4)建設事業の設計変更等によるやむを得ないもの
(5)国、県に準ずる公務員の給与改定を行うためのもの
(6)予算成立後、税制や補助制度、財務制度等法令の改正によるやむを得ないもの
(7)物価の変動等、経済事情の変化によるもの
(8)当初予算の積算を誤っていたため、それを是正するためのもの
等が挙げられる。
 予算の補正をめぐって留意すべき事項を挙げると、まず、補正の回数である。
 その回数については、別に法令上、制限はない。しかし、みだりに補正を重ねると、年間予算としての当初予算の意義がなくなり、また、財政運営の一貫性が失われることになるので、必要最小限度にとどめるべきであることは言うまでもない。
 当初予算は、年間予算として編成して、計画的に、しかも効果的に執行しなければならないのに、何となく使って何となく予算の不足をきたし、安易に次から次へと追加し、年間7~8回、あるいはそれ以上にわたって補正している例もある。
 しかも、交際費や需用費(特に食糧費)、旅費等の追加がしばしば見られるが、厳に慎むべきことである。
 もともと、当初予算は、年間の一切の経費を計上し、計画的に支出する建前になっているのであるから、物件費や人件費等の経常経費の補正は、特別の事情のある場合を除いて、みだりに行うべきではない。したがって、地方交付税が当初予算後になって決定されることや、国庫補助金や起債等の依存財源が年度途中に確実な見通しが立つことから、建設事業関係予算、給与改定予算、そして法令改正等特別の事情のあるものに限って、補正されるべきものである。
 また、補正予算は、必要とする費目の追加や削減の経費のみが提案されることから、予算を審議する側の議員にとっては、予算を総体的にとらえることが困難になりがちである。たとえば、人事院の勧告に準じて職員の給与を改定する場合、その必要費目だけが提案されるので、人件費が当初予算に比べてどう変わっているのか、全体としての検討を見落しがちであるので、給与費明細書にも十分目を通す必要がある。
 いずれにせよ、当初予算を補正することによって、当初予算の性格がくずれることはないか、今後の財政にどのような影響を及ぼすことになるか、財政事情が悪化することにはならないか、また、既存の計画がどう変更されようとしているのか、それが真にやむを得ないのであるか、といった点に十分留意したいものある。そして、当初予算には真剣になる議員が、補正予算は比較的おろそかにしがちであるという批判によく耳を傾けて、これにこたえたいものである。
 なお、補正予算は、歳入歳出予算のほか、継続費・繰越明許費・債務負担行為・地方債・一時借入金など予算を構成するすべての項目がその対象となるものである。


※需用費(じゅようひ)とは
町の事業又は行政事務の執行上必要とされる物品の購入取得及び修理等に要する経費。
その効用が比較的短期間に消費される性質のものである。
例:食糧費、消耗品代、燃料代、印刷製本代、光熱水代、修繕代

※物件費(ぶっけんひ)とは
経費のうち消費的性質をもつ経費です。
賃金、旅費、交際費、需用費など
性質別歳出の一分類で、人件費、維持補修費、扶助費、補助費等以外の地方公共団体が支出する消費的性質の経費の総称
具体的には、職員旅費や備品購入費、委託料等が含まれる。

※人件費(じんけんひ)とは
職員の給与や議員、臨時職員への報酬などの経費。

※経常経費(経常的経費)
経常的経費とは、現行の行政サービスや行政水準を維持していくために経常的に必要となる経費のことで、義務的経費・一次経費ともいいます。
例として庁舎の管理費(光熱水費など)、職員人件費や生活保護費が挙げられます。
一方、政策的経費とは、
政策的な判断のもと、新たな行政サービスの開始による経費や現行の行政サービスや行政水準の向上を図るため、一時的または臨時的に投入する経費のこと。
臨時的経費・二次経費ともいいます。
例:新規施設開設や小・中学校大規模改修のための建設事業費など