地縁の他孫(たまご)

http://www.ashita.or.jp/publish/furu/A2014/14.htm

 

 

あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

 

多世代交流型コミュニティ「地縁の他孫(たまご)」事業
千葉県柏市 多世代交流型コミュニティ実行委員

 

1.事業展開の目的
 我が国最大の問題「少子高齢化・核家族化」の問題を逆手に取り、増加する高齢者の知識と経験を生かして、経験が乏しい地域の子どもたちを育てる活動。
3世代同居の家庭は10%程度であり、地域で子どもを育てることはすなわち他人の孫を育てること、血縁のない地縁でつながった子どもたちを自分の孫の様に慈しみながら地域で育てる活動。
そして、地域で育った子どもが大人になって子育てをする時に、この地域に戻って来て子育てをしたいと思えるような素敵な地域を作ろう……これが活動の目的。2.事業の沿革
平成21年12月 東大大学院牧野教授より「多世代交流型コミュニテイ構想」を社会福祉協議会に提案
平成22年3月 東京大学 構想実現の可能性を探る実態調査実施
平成22年4月 東京大学 調査報告及び具体化に向けた活動提案
平成22年7月 TCN(高柳地域ネットワーク)で実行委員会発足
平成23年2月 多世代交流型コミュニティ実行委員会で活動展開開始 柏市長に活動構想説明 快諾を得て市民活動推進課と連携を確立
平成23年10月 円卓会議 活動の基本構想確認 地域全体を網羅した実行委員決定(地域学校校長・ボランティア団体長・市民活動推進員・民生児童委員・高柳区長・町会長・学校評議員・地域農家及び企業24名で編成。
平成23年11月 スタッフ養成活動開始 長老会議(コーディネーター)・まちづくりセミナー(イベンド企画)・コミュニティカフェ(茶論)の担当決定。
平成24年4月 コミュニティカフェ完成
平成24年5月 「地縁のたまご」正式活動開始 現在に至る

3.きっかけと活動のイメージ
 東京大学の実態調査結果、高齢者と子どもの交流が盛ん?=25%、地域に皆が集える場所が必要か?=85%、場所ができたら協力したい!=86%
この結果から地域に合った活動の方向をイメージした。
昔我が国には鎮守の杜を中心とした素晴らしい地域教育システムがあった。子どもが生まれると氏神様にお参りに行き(帰属意識)、村の祭りも盛大に行い、子どもたちはそこで遊びながら地域のしきたり、生き方・人への思いやりなどを大人たちに学び成長していった。災害があればそこに避難し、地域全体助け合いながら復興に励む。こんな地域を再現したいと考え地域全体で挑戦した。

4.問題はどこに
・少子化(昭和60年18%・平成25年13.4%)
社会情勢不安、晩婚化、子育てに必要な社会制度の整備遅れにより少子化に歯止めがきかない。
・高齢化(昭和60年10%・平成25年度22.3%)
医療や福祉制度整備の結果、高齢化は加速化し、平均寿命・高齢者数・高齢化は世界一の高齢化社会を作った。
我が国は今後「少子高齢化」社会に転換することを余儀なくされていく。
・核家族化
産業構造の変化、都市一極集中化、転勤などの事情により子どもが祖父母と同居することが困難になっている。
核家族化のもたらすものは大きい。(世帯人数推移昭和40年3.9人・平成25年2.4人)
核家族化は大家族と比べ「親子3世代による家事・育児の分担」が難しい。子育てを考えると「親世代が子どもと接する時間が減少」し、子育てに必要な「大人による見守りと教育」の機能が失なわれ始めている。これは日本の衰退につながると危惧している。

5.地域ができることを考える!「このピンチをチャンスに考える」
 「少子高齢化」「核家族化」は暗い将来に見える。しかし、二つの傾向を一つの物としてみると、その見え方は大きく様変わりする。ここで一つの大胆な仮説を立てた。
もし、地域が一つの家族になったら?
「子ども一人当たりの老人人口は」と考えるとどうなるか?
「子どもを見守る大人の人数」は3倍に増えている。(昭和46年0.24人・平成25年0.6人)
地域力を最大限に発揮して、「地域が一つの家族」となった時、日本の社会情勢を明るく切り拓ける「未来への希望」が生まれてきます。

6.皆が理解できる言葉で戦略を展開
 地域にあった「課題」と、解決の「戦略」
地域の抱えている「二つの課題」
「地域の子育て力が低下している」「高齢者の生甲斐が低下している」
私たちが考えた課題解決の「戦略」
「地域で子育てをすること」 が 「高齢者の生甲斐になる」
「子どもたちは将来の選択肢の幅が広がる」
すなわち……
地域の子どもを  自分の孫の様に慈しんで育てる   地域づくり
地縁(ちえん)の   他孫(たまご)        事業
を展開した

7.創設 試行 展開
 実践に向けた「事業方針」~達成のための地域の足りないものの創設
(1)地域づくりで子育をする「組織づくり」
 円卓会議開催 講師 牧野東大大学院教授 柏地域支援課
地域を網羅したメンバーで構成(学校校長・町会長・ボランティア団体・企業・農家・柏市・社会福祉協議会・地域住民)
地域が抱える問題の掘り起し・問題解決の方法を審議
地域コーディネーター養成講座開催(6回182名参加)
成果=事業コンセプトを地域で共有・運営のための仕組み構築
地域のコーディネーター養成を実施
(2)住民がいつでも集える大家族の大広間としての「居場所づくり」
 柏市より遊休車庫借用
コミュニティカフェの設立
支援者 千葉県・柏市・地域大工・ボランティア
(3)効率的な運営のための「技術革新」
 支援者 地域のIT企業(地域出身の2企業)
ホームページの構築 広告広報費削減・会員管理のIT化
(4) 事業を推進するための「収益構造」
 カフェでの事業収入・ホームページの広告募集・農作物の朝市の展開
(5)まちづくりセミナー
 支援者 柏市
支援者 公募ボランティア
イベント運営の企画立案実践・子育て地域問題解決を絡めた新たなイベントのあり方研修(15回290名)
成果=公募による新たな人材発掘 企画・実践スタッフ体制確立

8.試行で変革された活動
・体験講座伝承事業
 正月の餅つき大会(小学校2校250名)
従来の展開…単に餅をつかせて食べさせるためのイベント
新たな展開…小学生を主体に準備・餅つき・後片付けまでを小学生が行うイベント(高学年の低学年に対する指導と思いやり醸成)
成果=「楽しみながら経験できる」イベント・ヘレベルアップ 大人は「実働する人」から、「見守る人」に役割が変わり、より「大人と子どもがかかわれるイベントに変革した。
・中学生の「地縁のたまごロゴマーク制作」
 新たな展開…キャリア教育授業を多世代で実施。デザイン志望者にプロデザイナーの指南を付け、カフェロゴマーク制作とシャッターペイント。
成果=プロと同じプロセスを踏襲させて質の高い職業体験を実施。デザイン制作・円卓会議で承認・政策実施しを行い、中学生が実務レベルで地域活動に参加できることが確認できた。
・コミュニティカフェ
 新たな展開…大家族の大広間として誰でも気楽に活用・ここに来ればやりたいことが見える・仲間が増える・気楽に立ち寄れる場所とした。
成果=大人同士の活動と大人が子どもと共同作業の実践。高齢者と子どもの融合により子どもの探究心・実践力・協調力・人への思いやりなどの醸成。地域の中に人と人、人と情報をつなぐ場所常設により「友だち」「絆」「生き甲斐」を見つける仕組み構築。
支援者 公募ボランティア60名
・地域の祭り継承
 20年続いた高柳祭を多世代交流型コミュニティが継承。高柳祭実行委員会を設置し、地域全体の連携を確立するため、地域で活動している10ボランティアグループ・地域の学校(小学校2校・中学校・高校)町会・社会福祉協議会・消防団で実施している。
成果=地域全体で「地域の絆」・連携の確立を図っている。加えて、ボランティアグループは活動資金を得るため模擬店を開設し、祭りを盛り上げると同時に売上利益を、子どもたちの育成に還元することを可能にしている。2日間の祭り参加者は6千人に達し、地域の祭として定着している。
・学校春夏休みの特別企画
 児童の育成には長期休暇時が最適と考え、特別企画を実施している。地域の小学校と話し合い、学校でできない教えの実践として東京大学大学院・東京理科大学の教職専攻の学生を動員し、理数系の科目で児童の創造力や解決能力を養うために座学と実験(応用問題と実験)を行っている。昨年は学科として数学・実験はスライム作り・浮沈子・ペットボトルロケット。3次元キャドを実施し学年に合った解説では非常に好評で父兄からも継続の要請が大きい。この活動では大学生が主体となるが学校教職員との連携も行い今後の展開が期待されてる。児童の参加人員は200名。
・地域ボランティアグループ間の連携
 地域のボランティアグループは多いがご多分に漏れず高齢化が進み従来の企画運営に支障をきたしている。しかし、実施されている企画は児童育成に欠かせないものである。解決策としてグループ間の連携を強化し、運営に必要な資質に合わせた応援体制作っている。地域活性化の目的は同じであり連携協力が日常行われている。
昨年度の各事業参加人員は
・コミニティカフェ(茶論)=稼働日数190日 利用者6千人 ボランティア数60人
・まちづくりセミナー=開催日160日 参加者1630人 ボランティア数20人
・朝市(住民との融和)=開催日数48日 利用者数2千人
・その他児童学生参加状況=サロンイベント参加 250名 校外授業120名(ボランティア協業) 児童センター(幼児・父兄)50人 ボランティア協業720人
・HPアクセス件数=年間1万2千件 リピーター率50%

・今後の課題
 ボランティアの参加率向上(特に男性)
児童参加率の増加(高齢者と子育て世代が集える企画で仲間づくり)
後継者の育成
事業資金の確保

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