2024.01.23 若者の未婚からみた日本の少子化

若者の未婚からみた日本の少子化
東京女子医科大学衛生学公衆衛生学講座准教授 坂元 晴香

●東京女子医科大学衛生学公衆衛生学講座 准教授 坂元晴香(さかもと はるか)氏
医師、博士(公衆衛生学)。
札幌医科大学医学部卒業後、聖路加国際病院で内科医として勤務。その後、厚生労働省国際課及び母子保健課に内科医として勤務。国連総会や、世界保健機関(WHO:World Health Organization)総会など各種国際会議へ日本代表として参加した他、2016年にはG7伊勢志摩サミットやG7神戸保健大臣会合の会合運営にも関わる。
2014年には、世界銀行より奨学金を受けハーバード大学公衆衛生大学院にて公衆衛生学修士(MPH: Master of Public Health)を、2021年には東京大学にて公衆衛生学博士を取得。現在は、WHO西太平洋事務局コンサルタント、東京財団政策研究所主任研究員、日本医療政策機構シニアマネージャーを併任。


個人の体験で語られることが結婚だが、データから言えることを伝える

以下間違いか、古いデータによるもの。
日本の少子化の原因は・・・・
• 若い世代の価値観の変化
• 若い世代が恋愛や結婚を面倒と思うようになった
• インターネットなど娯楽の多様化
• 女性の高学歴化
• 貧乏子だくさん
全てデータに基づかな思い込みか、一昔前の価値観です


少子化の最大の要因は未婚者の増加
日本は98%が結婚した夫婦から子どもが生まれる
グラフ1
1970年代から結婚した夫婦から生まれる子供の数はかわらない
最近ゆるやかに右下がり
1970年 2.2
2015年 1.94

何のデータが下がっているかは未婚率。
結婚をしなくなった。
• 生涯未婚率(50歳時の未婚割合)
男性2.60% 女性4.45%(1980年)
男性23.37% 女性14.06%(2015年)

増えているのは、「交際相手もいないし交際に興味がない」という層が増えている
これは男性の場合、年収が300万円未満。
年収が800万円以上の男性では、このように回答する者はいない
雇用形態もこの統計に結びつく
所得が低くなればなるほど、交際相手がいない・交際に興味がないが増える

婚活市場で見られる格差
水色のグラフは、未婚でかつ結婚願望なし
25-39歳の男性を見ると顕著
年収が上がると既婚者が増える(男はカネが必要という意味か)
女性は、25-39歳というと、ちょうど妊娠出産年齢。200万円から400万円の幅が未婚率が多い。(普通に稼いでいる層という意味か)

男性が女性に求めるもの:
年齢と容姿。最近は経済力が入って来ている
女性から男性に求めるもの:家事育児能力という選択肢が入って来ている

お互いが、60、65歳まで働けるかわからない。
リスク分散のため、相手に求めることが変化している。
共働きがデフォルト。

18-34歳、変らない結婚願望
緩やかに下がっているが、男81.4%、女84.3%(2021年のデータでコロナ真っ最中なので今後の動向を見守る必要あり)

増えている未婚者は、経済的に低い層と不安定な雇用形態にいる人

・娯楽が多様化した?
所得との相関はないはず。
高所得の人も結婚しないはず

・若い人たちの価値観の変化?
8割以上が結婚願望あり。願望は高い確率で持っている。

未婚問題は、所得と雇用形態のデータと連動しており、
所得が上がらない。
雇用が不安定ということが影響していると読み取れる。

子どもの数にも現れる“格差“
子ども数と所得の相関関係もある。
年収が上がれば子供が多い
⇒昔は「貧乏子だくさん」と言われたが、昔からも逆。その差がどんどん開いている

女性の高学歴化は少子化の原因か?
(1970年まで)
⇒二つの線に開きあり=大卒未満の人の方が子供を産んでいる
1971年以降は差がない。学歴に関係がない(日本)
ヨーロッパでは、逆転現象が起きている。
高学歴女性の方がより子どもを産む
(所得との関わりとも思われる)
日本はまだこの逆転現象が起きていない。
起きるかどうかはわからないが・・・

日本では、子どもを持つと女性が仕事を辞める(昨日の講義。女性が仕事を辞めないように夫が支えることで、カップルとしての年収が下がらない=上がる)

セクシャルアクティビティの実態(2022年)
コロナの間。世界と比較して日本が突出して高い
コロナ明けで、出生率が海外では回復傾向。日本だけ回復していない

◎少子化対策のために何をすれば良いのか?

よくある誤解。
「子育て支援と少子化対策は同じではない」
• 子育て予算を増やせば出生率が上がるというのは、諸外国の例を見ても日本のこれまでの経緯を見ても間違いであるのは明らか!!
(子育て支援が不要という意味ではないぞ)

諸外国の失敗例がある。子育て支援と少子化対策は関係がない。
韓国は、子育て支援のおカネを増やしているが、世界で最も低い出生率。
デンマークは、日本の4倍くらい子育て支援をしているが、出生率は下がっている

子育て支援としては、
一つ目;お金の支援、児童手当、生まれると、まとまったお金が入る
二つ目:税制優遇措置
三つ目:保育所の拡充、保育士の待遇改善、育児休暇の長さ、
があるが・・・

少子化対策としてなにをすれば良いのか(子どもを産んでもらう政策)
うまくいった政策でも同じ政策を他の国でやったらうまくいかなかったということもある。

1.経済的支援:第二子以降に手厚く補助。規模感を大きくする
児童手当が効果がないという研究もある。
第二子への支援は、第二子に使うことが多い(第三子を生むことに使わない)
第三子、第四子を産んで初めてもらえる恩恵はある程度効果があるが、個人の決定に政策を結びつけることの問題がある。

育児休暇の影響も限定的
育児休暇の長さが関係ないことはハッキリしている。
日本は充実している。とくに長さが充実。
有給の育児休暇はある程度の効果あり

男性の育児休暇は、エビデンスがまだない。
ただ、第一子の時に男性が育児に参加している方が、第二子が生まれている割合が増えている

最も政策が成功している国・ハンガリーの例
(日本に当てはまるかは不明)
他の国でうまくいかない場合は参考になる。
上手くいった例を当てはめても、他の国で上手くいくかわからないが、ウマくいっていない例はは当てはまらないであろうと参考になる。

重要なこと
• 少子化やその背景にある未婚者の増加は決して、“若い世代の価値観の変化”“娯楽の多様化”“女性の高学歴化”で片付けられる話ではない
• むしろ、“就職氷河期世代”とその後に続く“停滞した社会”の犠牲。個人の責任に帰すのではなく、マインドセットの変化・社会構造を変えることが必要
• データに基づく政策を
結婚している/していない層は誰なのか、子どもを持つ/持たない世代は誰なのか。“貧乏子沢山”は間違い

結婚・恋愛は個人の問題ではあるが、社会的な問題とも結びついている

全国最低の出生率の東京内を見ても、バラバラ
三重県内でもバラバラ

若い人が地域を出るきっかけは、その地域で少子化を招く原因となる。

住居手当が効果あり。
家族で子ども含めて4人で住める家が手に入ること

長時間労働と第二子以上の出生率の関係あり

なぜ少子化対策が必要なのか?
• SRHR(Sexual and Reproductive Health Rights, 性と生殖の権利)は当然ながら守られるべきものである。
• 多くの行政サービスや社会保障は規模の恩恵が大きい。
少子高齢化が進む日本では早晩、サービス維持が困難になる(社会保障・福祉、国民の生活水準、地域社会の維持、国力)
• 生殖、そして子孫を残すことは本来的には生物の本能的行為のはず。
裕福な人のみが結婚し子孫を残せる社会を許容するのか

異性との間に子孫を残すということは、生物の基本的な営み

「人口が縮小した社会の在り方を考える」という意見あり。
40代前半までが生物学に産める年齢の女性が減少(少母化)すると、社会保障が少なくなる。
次世代のサービスが減ってゆく。いいのか


質問
晩婚化が少子化の影響では。
基礎自治体でできることは?
婚活支援はどうでしょうか?
> 需要が高まっている。職場での恋愛が難しくなている。上司が紹介するわけにはいかない(恋人はいるのか?と尋ねるだけでセクハラと言われる)
マッチングアプリが増えている。(伏せている人が多かったが、今は隠すこともなくなっている)

しかし、信頼性が高いアプリは、様々な条件を入力する必要があるので、これに当てはまらない人は、気が引けて出来ない。
なので、行政の婚活支援に対するニーズはある(国でも補助金が議論されている)

千葉県の流山市
都市部でもベッドタウンでもない自治体だとしたら・・・どういう政策を行いますか
>根本的なところは産業がないに行きつくと思う。
だから町から若い人が出てゆく。産業をどう作ってゆくか
若い人がが魅力に思える産業をどう起こせるか。
・地元に職を創ることを考える。
・住宅的な手当て(児童手当が効果がないと言われているから)
・多子世帯への手当も考える。

・TikTokなどで、キレイな人が見やすくなっているが晩婚化に関係ないのか?
>スペック重視になっていることはある。
今は身の回りの人で、なんとなく相性が合うなどで決めていた。
しかし、今は、アプリだと条件を入れるので、そもそも条件に合わない人とは出会わないので、そういう弊害は海外でも言われている。

子育て世代の人が流入している地域(大都市から流れてきている)
ベッドタウンからの流入をしている自治体があるが、根本的な少子化に対策しているわけではない。
東京周辺は住居の要因。しかし都心から離れると通勤に時間がかかるので、第二子・三子の増加はなくなる。リモートワークが出来るというのが効果があると言われている。

SNSS子どもを産むことの困難が流れている。ベビーカーを推してるとこんな目にあった。幼児園落ちたなど。
イヤな情報の方が広がりやすい。
子育ての優先のスペースを設ける。ベビーカー有線で電車に乗れる時間を作るなど。

子育て世代の所得を増加させる施策は?
>公的な部分だけでは出来ないことが多い。
雇用関係との問題が結びついている。
大手商社の方とお話をしていると社内の出生率が倍となったと話されていた。
民間企業で、第三子以降の支援(出生ボーナスを配布)
社内の事例として出生が増えている。育児休暇とは、リモート勤務などの条件もあると思う。

>少子化対策として考えるなら、第三子以降が必要
国がやろとした第三子以降の大学補助など、そもそも産めない人に対する施策は、不妊治療が考えられるが、第三子以降が手厚くなる。
ある施策をするにあたって、分断が起きないように考え施策を行うことが必要。

出生別調査の資料は参考になる。
https://www.ipss.go.jp/site-ad/index_japanese/shussho-index.html

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